学生時代のある日、家族旅行にいこうという話になりました。
話し合った結果「広島」に決まりました。
小学校の修学旅行ですでに行ったことがありましたが「もう一度行ってみたいな」という気持ちがありました。
広島というのは、歴史の教科書に必ず登場するところです。
世界で初めて原子爆弾が投下された町であり、戦争の傷痕がいまだに残っている場所だからです。
実は、広島の有名な原爆ドームは「世界遺産」の1つです。
世界遺産とは、国際連合の機関の1つであるユネスコが認めた文化的に大変価値のある地域や建造物のことです。
世界遺産といえば「華やかで素晴らしい場所や建物」というイメージが強いですが、実は逆の場合もあります。
同じ過ちを二度と犯さないことを後世に伝えるための「負の世界遺産」もあります。
原爆ドームは、そんな「負の世界遺産」として登録されている国際的に認められた遺産です。
こういうことは旅行をきっかけに知るようになりました。
また実際に見た建造物だからこそ、興味もひとしお湧いてきます。
家族と一緒に原爆ドームだけでなく、戦争の資料が展示されている博物館を何軒も回りました。
家族旅行にもなり、気分転換にもなり、なにより勉強になりました。
また、あるときは京都へ家族旅行に行ったこともありました。
中学校の修学旅行のときにすでに行ったことがあるので、2回目になります。
2回目でも、それで違った楽しみ方があります。
一度目は観光地を回ることで精いっぱいでしたが、2度目になると、風景や街並みを楽しみながら観光できる余裕が生まれます。
金閣寺はもちろんのこと、清水寺や三十三間堂、そのほかの数多くの有名観光地を巡りました。
教科書だけで見るお寺と実際に見るお寺とでは、やはり受ける印象は全然違います。
ポイントだったのは、歴史の教科書に出やすい場所を重点的に見て回ったことでした。
実際に自分が見てみると「あのときに見たお寺だ」と思います。
旅行から帰った後、なぜか歴史の教科書を開いて、旅行先で行った建物を教科書の中で確認したくなりました。
「これこれ。見たことあるぞ!」と思い、感動するのでした。
そのほか長崎や北海道にも、家族で旅行にいきました。
毎回思うことは、家族旅行に行った後は、歴史の勉強が無性にしたくなることです。
行けば行くほど、歴史への関心が強くなります。
「あのときに見たお寺にはどういう歴史があるのか」
「なぜこんなに有名になったのか」
「この地域は○○で有名」
行ったことがあるかないかだけで、全然違います。
実際に行った場所が、テレビで一瞬映るだけでも嬉しくなります。
一度でも行って見た経験があると、頭に入りやすくなり、また忘れません。
しかも興味も湧いてきます。
旅行を通して土地や建物を知ることで、興味が湧いて、関心が強くなり、勉強への意欲へと変わります。
家族旅行で行く場所は、どこも「勉強がてら」だったような気がします。
今思えば、これらの旅行は「親の仕掛け」だったのかもしれません。
親ながら、旅行を通して子どもの勉強の手伝いをしたかったのでしょう。
歴史に興味を持ってほしいという親から子どもへの暗黙のメッセージが、少しずつ伝わってきます。
そういうことは、学生を卒業した今になってようやく気づきました。
今自分が歴史好きな理由は、そういうところがきっかけになっています。
歴史が好きになるのは簡単です。
有名な歴史的な場所へ行けば、自然と興味は湧いてきます。
私の歴史好きは、親との家族旅行がきっかけになるのです。