会議のやりとりや内容を書きとめた「議事録」と呼ばれる書類を作ることも、新人の仕事の1つです。
私も議事録を何度も作らされた経験があります。
新人が会議に出席すると、必ずといっていいほど議事録を取る担当になります。
議事録は、会議に出席できなかった人にも内容を伝えるために書くだけのものではありません。
よくありがちな「あのとき言ったはず」「そんなことは聞いていない」という、つまらないやりとりをなくすためにあります。
そのために、議事録といえば、双方の会社側の代表者が内容を確認して、ハンコを押すことになっています。
とはいえ、肝心の議事録がしっかり書けていないと、話にもなりません。
一度経験するとよくわかるのですが、議事録を書く作業は思ったより大変なのです。
話しているやりとりをすべて記録しようと思うと、すべてを書ききれず、途中で指が止まってしまいます。
話の内容を要約して、ポイントだけを押さえて書きとめるようにします。
しかし、内容をまとめようとしても、複雑な話の内容なら、それだけ要約は難しい。
特に新人ほど、仕事の内容、意味、流れ、様子がまだわかりませんから、話にもついていけません。
専門用語が飛び交う内容は、聞くだけで精いっぱいなのです。
当然、要約どころの話ではありません。
私の議事録の苦労話なら、いくらでもできます。
何度か議事録を担当していくと、だんだんポイントがつかめるようになります。
いろいろ試行錯誤した結果、一番いい議事録の書き方は「すべてを書こうと努力する」ということです。
「それじゃあ、話の進展が速いときには、書ききれないじゃないか」
そんな声が飛んできそうですね。
たしかにそうです。
すべては書ききれませんが、すべてを書こうと努力をするのです。
書きかけで終わってもいいし、中途半端な文章で区切ってもいいですから、できるかぎりをメモしようと努力だけはしましょう。
新人は、仕事の流れや仕組みがわかっていませんから、会議に出席してもやりとりの内容を把握できません。
聞いたこともない専門用語が飛び交い「あのメールの件についてですが」と言われても「あのメールとはなんだろう」と思います。
しかし、わからないからこそ、すべてを書いてしまおうとするのです。
理解できなくてもいいから、せめてメモだけはとっておくのです。
専門用語も、そのときは意味がわからなくてもいいですから、とにかくメモを取っておきます。
当然ですが、走り書きになり、字は汚くなり、中途半端な記録の連続になります。
しかし、会議が終わり、記録した「言葉の切れ端」だけをつまみとって話の流れを追うと、不思議なことに会議を再現できるのです。
そのとき聞いた専門用語も、後から聞くとあっさり、意味がわかったりします。
会議のときに聞いてもわからなかった内容が、後から冷静になって考えると、理解できるようになります。
新人はすべてが勉強です。
「話の重要なところだけを要約して書けばいい」という技は、慣れた人が行うことです。
いずれはそうできるようになればいいですが、初めからできる人はいません。
話の重要なところだけを要約できるように、何もわからない今のうちはすべてを書いて勉強を含めてメモを取っておくのです。
わからない話の内容でも、メモを取っておくことで、後から誰かに聞いて尋ねることができるようになります。
専門用語も、わからなければ、勉強をするチャンスと思い、何もかもメモを取っておくのです。
その繰り返しによって、だんだん会議についていけるようになり、新人が成長します。
議事録を書くことは、新人を成長させるためのいい仕事なのです。