私が社会に出たとき、上司から頼まれた仕事は「速く完璧に仕上げろ」ということでした。
社会に出たときに、まず誰しもこうした指示を受けるため、驚くことでしょう。
「速く」と「完璧」は、矛盾しています。
速くしようと思えば、雑になります。
一方、完璧にしようと思えば、遅くなります。
「速く完璧に」という仕事は、難易度が高く、難しい仕事なのです。
社会人の誰もが目指す最終的な極致を、新人のはじめのころに、言われます。
初めからできる人はいません。
社会に出たばかりの私は、そのまま信じて、速く完璧にしようとしたものです。
当然ですが、スピードを心がけると、間違いが多く、失敗したものです。
一方、完璧に仕上げようとすると、チェックに時間がかかり、仕上げるまでに時間がかかります。
速くしようとすれば「間違いがあるぞ」と叱られることになり、完璧を意識すると「速くしろ」と叱られます。
どちらに転んでも叱られますから、よく落ち込んだものです。
新人のころ、毎日、叱られていました。
実は、初めからできない仕事なのです。
上司もそれをわかったうえで、指示しています。
「今はできなくてもいいけど、将来的にはできるように今のうちから意識しておきなさい」
直接は言いませんが、上司からの温かい無言の言葉でした。
たしかに「速く完璧」を意識すると「仕事ができる人」に近づけます。
はじめこそはうまくいきませんが「速く完璧」を意識するかしないかは、その人の将来を決めてしまうほど、大きな意味があります。
学生時代は、時間がたっぷりありますから、この感性を身につけることは難しい。
点数さえよければ、それでいいという世界です。
ゆっくりしても、叱られることはありません。
しかし、社会では「速く完璧」を目指すことで、時間管理がうまくできるようになり、仕事の仕方を覚えます。
人とのやりとりもうまくなり、何が無駄なのかが見えてくるようになります。
「速く完璧」という目標を意識することで、能力、技能、心も同時に高めることができます。
その後、私はだんだん仕事を速く完璧にできるようになるコツをいくつか発見します。
他人の仕事を見てノウハウを盗み、さまざまな仕事を通して、身につけます。
「速く完璧」に少しでも近づくためには、ポイントがあるのです。
しっかりポイントを押さえることで、だんだん速く完璧に仕事ができるようになるのです。
これが社会人として、成長するということです。