記憶し続けられる期間は、大きく分けて2種類あります。
数時間~1カ月程度しか記憶できない「短期記憶」と、1カ月~数年にわたって記憶し続ける「長期記憶」の2種類があります。
さて、まず疑問に思うのが「なぜ短期と長期にわかれているのか」ということです。
これは重要なポイントです。
理由は、人の生命維持に関係します。
脳は、神経細胞の塊です。
神経細胞は、脳内におよそ千億個もあるといわれています。
私たちが、話したり、記憶したり、泣いたり、走ったりなど、そういう活動は脳の神経ネットワークによって実現されています。
この「神経細胞およそ千億個」という数字が、いかに膨大であるか想像できるでしょうか。
たとえば、皆さんが読んでいる新聞一束は、およそ40万字です。
毎日、新聞の情報を記憶しても、およそ700年もかかるほど膨大です。
しかし、膨大とはいえ、聴覚や視覚の情報は、特に多くの記憶領域を消費します。
ある研究によれば、入ってくる五感情報をすべて記憶しようとすれば、たったの5分で限界になるともいわれています。
脳は命に関わる最重要な情報は長期的に記憶し、重要な情報は短期として記憶して、重要ではない情報は忘れるようにします。
記憶量に限界がある脳だからこそ、本当に必要なことだけ記憶し続け、重要でないものは忘れるようにします。
覚えるべき事柄も、本当に生命維持に必要な記憶を取捨選択するために、長期記憶と短期記憶に分けています。
生命維持に直結する重要なことは長期に記憶して、さほど重要でないことは一時的な記憶にとどめるという短期記憶で済ませます。
よくできたシステムです。
忘却のおかげで、私たちはつらい過去があっても忘れることができ、元気になれます。
長期記憶のおかげで、生命維持に必要な情報は蓄えることができているのです。