人間の脳の中で、記憶する場所には2種類の場所があります。
「短期記憶をする海馬(かいば)」と「長期記憶をする側頭葉(そくとうよう)」です。
人間がまず覚え始めたことは、いきなり長期記憶ができる「側頭葉」ではなく、短期記憶をする「海馬」という場所に保存されます。
海馬は、短期記憶をする場所ですが、もう1つ重要な役目を果たしています。
「情報の重要性を判断する」という役目です。
人間の脳はよくできています。
生命に関わる情報は重要と判断して長期的に記憶する一方、生命に関係のない記憶は不要だから忘れようとします。
長く生き永らえるための脳のシステムです。
繰り返し入ってくる情報は「何度も入ってくるから重要に違いない」と判断して、長期記憶をする「側頭葉」へ記憶を移動させます。
復習すれば記憶が強化されるのは、そういう理由だからです。
しかし、例外があります。
無条件にいきなり側頭葉へ記憶を移動させる方法があります。
それこそ「強い感情を伴った記憶」です。
強い怒りや悲しみが伴った記憶は、短期記憶の海馬を素通りして、いきなり長期記憶の側頭葉に保存されます。
なぜそうなるのかというと、脳が「生命に関わる情報だ」と即座に判断するからです。
強い感情が伴っていることは、生命に関わることに違いないと脳が判断し、いきなり長期記憶をさせようとします。
先生に叱られた記憶は、一度しか経験していないにもかかわらず、長く記憶に残り続けます。
失敗した経験ほど記憶に残る理由も同じです。
強い感情が伴っているからです。
受験勉強にも、この強い感情を伴う方法があればいいですが、なかなか難しい。
しかし、強い感情が伴うある時期があります。
それが「受験前の焦り」です。
「受験日まであと1カ月しかない! 時間がない!」
受験前には短い残り時間に焦りが出ます。
焦ったら勉強することです。
ぎりぎりの状態でする勉強はよく覚えます。
徹夜をすると、わずかな勉強時間で覚えられるのは、焦りがあるからです。
脳が活性化され、記憶力がアップしています。
焦ったらどうするのかというと、勉強です。
焦りながらする勉強は、普段の何倍もよく覚えられます。