私はリーダーをしているとき、部下に対して面白い現象を目の当たりにしたことがあります。
実際にあった例を紹介します。
ある日、お願いしたい仕事があり、部下の1人に「時間があるときでいいよ」という指示でお願いしました。
特に急いでいる仕事ではないので「時間があるとき」という抽象的な指示をしました。
すると、いつまで経っても仕事をしてくれないのです。
「仕事できた?」と聞くと「時間がありません」と答えます。
「いつ、できそう?」と聞いても「わかりません」と答えます。
人間の脳内で「時間があるとき」という言葉は「暇なとき」というふうに変換されているようです。
まったくもって人間の脳は、惰性へと傾くようにできているものです。
そこで私は、指示の内容を変更しました。
「12月17日の15時までに仕上げてほしい」という具体的な締め切りを与えました。
すると、だらだらしていた部下が、突然、人が変わったかのように一生懸命動き始めたのです。
さっきまで「時間がありません」と言い訳していた部下が、懸命に「何とかして時間を作ろう」と試行錯誤をし始めるのです。
「最初からそういう努力をしてくれよ」と思いますが、指示の1つで人間の動きがこれほど変わるのかと実感した出来事でした。
本当に人間は不思議なものです。
締め切りがあるかないかは、人間の行動を大きく変えさせてしまいます。
期限があると、必死になって頭を使い、知恵を絞り、一生懸命になり、底力を発揮します。
デッドラインがあるだけで、人間は活性化されます。
締め切りは、ないよりあったほうがいい。
組織をまとめる人間は、常に「締め切りを設ける癖」をつけましょう。
締め切りの必要のない仕事でも「わざと」締め切りを作るのです。