人の心は、磨けば磨くほど輝くようになっています。
初めは輝きが小さくても、磨けば磨くほど輝きが増していきます。
「輝いている心ほどきれいな心」ということです。
人の優しさや気持ちがわかるようになります。
そんな心を磨くために必要なことが「つらい経験」です。
つらい経験は、あなたの心により磨きをかけます。
たくさんのつらい経験をした人ほど、人の悲しみやつらさを理解できるようになり、優しく接することができるようになるのです。
私の祖父は、今はもう亡くなってこの世にはいませんが、生前は戦争に関することはよく知っている人でした。
それもそのはずで、祖父は第2次世界大戦の真っただ中で生きていた人です。
戦争が始まり、戦い、終戦を迎えるという一部始終を見ています。
戦争で大けがを負って傷ついているところや、戦争中の貧しい暮らしについては痛いほどよく経験してきました。
ちょうど戦時中を生き抜いてきた人だけあって、テレビで第2次世界大戦の映像や写真が出ると釘付けになっていたものです。
そんな祖父は、戦争の話になると熱く語り始めますが、その一方で不思議と優しくなります。
私の実家には、戦時中に祖父が使っていたはさみがあります。
そのはさみはもうさびついて古くなってしまったものだと言うのに、大切にして決して捨てようとしなかったことを覚えています。
とても古くて、はさみ全体がさびていましたが、それでも使っていました。
そのはさみは、祖父が戦時中、人のけがの手当に使っていたものとのことです。
戦争中の助け合い協力した思い出、国のために戦い命を落としていった人を思うと、はさみをどうしても捨てられないのでしょう。
しかし、思い返してみると、つらい経験をしているぶんだけ優しくなることができていたのだとわかります。
つらい経験を通して優しくなり、1つのはさみでも大切に使っているのです。
はさみだけではありません。
石鹸やタオルも「捨てるのはもったいない」と言って、大事に押し入れにしまっていました。
物がなかった貧しい時代から生きていた祖父と祖母の部屋には、捨てられない物であふれていました。
ほとんどが使わないものでしたが、物を大事にする祖父と祖母の心が表れた部屋でもありました。
物があふれている今の時代にはない、優しい気持ちに満ちた部屋だったのです。