あがり症は、どのようなメカニズムでなるのでしょうか。
あがり症のメカニズムを知る前に、まず緊張のメカニズムから整理しましょう。
もともと緊張には「体の防御反応」という意味があります。
差し迫った状況になったとき、臨戦態勢に体を整えなければいけません。
人は何らかのストレスを受けると「アドレナリン」「ノルアドレナリン」という2種類の物質が分泌されます。
アドレナリンもノルアドレナリンも、恐怖や興奮をもたらす物質の1つ。
アドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されると、交感神経が優位になり、体が活発に働くようになります。
交感神経とは、体を活発にさせる作用をする自律神経です。
交感神経が刺激されて優位になると、血圧・心拍数・発汗などが促され、臨戦態勢に整います。
これが、臨戦態勢として心や体が引き締まる状態、つまり緊張です。
あがり症の基本的なメカニズムは、緊張と同じです。
ストレスを受けると、アドレナリン・ノルアドレナリンが分泌され、交感神経が優位になる。
体が活発に働くようになり、血圧・心拍数・発汗などが促される流れです。
ただし、あがり症の人には、次の特徴がよく見られます。
まだ成功体験を積んでいないと、人前でどうすればいいかわからず、緊張しやすくなります。
慣れが不十分なまま、いきなり大舞台を経験すると、極端に緊張しやすくなります。
失敗体験による悪影響もあります。
過去に大きく失敗した体験があると、その記憶が悪影響を及ぼし、人目に対して体が拒否反応を起こすようになります。
人のDNAの中には、緊張しやすい遺伝子も見つかっています。
また体質的にアドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されやすかったり、交感神経が優位になりやすかったりする人もいます。
遺伝的・体質的な特徴があると、緊張の影響を受けやすくなります。
こうした事情があると、ちょっとした人目でも、敏感かつ過剰に体が反応します。
「普通の汗が出すぎる」「声や手足が震える」「顔が赤くなる」などです。
結果として、あがり症という状態になるのです。
ただし、あがり症は克服できない症状ではありません。
あがり症の人でも、正しい訓練や治療に取り組んだ結果、人前でもまったく緊張しなくなった事例は数多く存在します。
「自分にはできない」と諦めるのではなく、少しでも克服に向けて取り組みましょう。