今でも忘れはしない、私が22歳のときです。
当時は、まだアメリカに留学している最中であり、学生時代を送っていました。
おかしな話ですが、興味本位から学校では日本語のクラスを取っていました。
「日本語で日本語を勉強すること」はあっても「英語で日本語を勉強すること」は、なかなか珍しいことです。
そんな理由から、興味本位で日本語のクラスを取っていました。
同じクラスの中に、ダントツに飛びぬけてかわいい韓国人の女の子がいました。
日本にとても興味があったらしく、積極的に日本語について聞いてきたことがきっかけで、彼女と知り合いました。
クラスは毎日あり、毎日彼女と顔を合わせるようになったら、私はだんだん彼女のことが好きになってしまいました。
私はクラスにいくことが楽しみの1つになり、またその反面つらい日々の始まりにもなってしまいました。
彼女のちょっとした"そぶり"は、私に対して恋愛的感情があるのではないかと思わせます。
しかし、その反面、彼女のちょっとした"そぶり"は、やはり自分には興味がないのではないかと思わせます。
彼女の行動一つ一つが、私を悩ませます。
最後の辺りは本当にクラスに行くのがつらくなってしまいました。
彼女のことが、頭から離れなくなってしまったのです。
頭の中で「深入りしないようにしよう」とどんなに考えても、気持ちは正直に動いてしまいます。
彼女に会えば会うほど、幸せのタネにも、悩みのタネにもなり、気が狂いそうになってしまったのです。
私はそのとき一瞬「ストーカーになる人って、こんな気持ちになっているんだろうな」と思ってしまったくらいです。
ストーカーなんてなりたくありませんし「何とかしなければ!」と思い、私は苦渋の決断をしました。
「登校拒否」です。
私は彼女が好きであるゆえに、もうこれ以上、頭の中を占領させたくなかったため、少し距離を置くことにしたのです。
好きな人と会ってしまうから学校へ行かないということは、なかなかあるものではありません。
私は今でも、珍しい行動をしたなと思っています。
私が日本語のクラスへ行ってしまえば、彼女と会ってしまい、頭の中から離れなくなってしまう病に再び冒されてしまいます。
そのため、もう思い切って学校へ行くのをやめたわけなのです。
おかげでクラスへ行かなくなってからは「頭から離れない病」は少し楽になりました。
だんだんほかのことも少しは考えることができる余裕が出てきた、そんなときです。
今度は、学校へこない私を心配して、同じ日本語のクラスのある友人が、心配で電話をかけてきてくれました。
「どうしたの? 最近、全然学校来ないじゃん? 何か病気でもしたの?」と、心配していました。
その人はとても信頼できる友人だったこともあり、私は正直に学校へ行けない理由を話しました。
すると……、友人に大笑いされてしまいました。
私としては、真剣に恋愛に悩んでいるのに、友人にしてみれば、おかしく思えたのでしょう。
たしかに私は、少し気にしすぎなのかもしれません。
友人に話すと「大丈夫だよ。彼女が心配しているよ」と元気づけてくれたため、久しぶりにクラスへ行ってみました。
すると、彼女が、なんとまあかわいい笑顔で迎えてくれるではないか。
彼女は本当にいい子で、何があったのか、病気でもしたのかと、いろいろと私のことを気遣ってくれます。
しかし、私は、彼女の前で本当の理由が話せませんでした。
私が学校へ行けなくなったのは、目の前にいる彼女本人が原因だっただけに、何も話せないのです。
それからは、学校へ行ったり行かなかったりの不安定な毎日が続きました。
私も、ずっと頭に恋愛の負荷をかけていると、だんだん頭の中がもやもやになってきて、疲れてしまいました。
そんな状態を何とかするために、最後に「一大決心」をすることにしました。
「告白」です。
告白して、白黒はっきりさせてしまえば、この苦しみから放されるのです。
なぜ今までそれができなかったのでしょうか。
答えを聞くのが怖かったのです。
私は「好き」の一言すら言えない弱虫でした。
しかし、考える毎日にもう疲れてしまい、その疲れのおかげで恥ずかしさが少し紛れていました。
そこである日「今なら告白できそうだ」と思い、その子に「ラブレター」を書くことにしました。
自分の気持ちを正直に書いたラブレターを渡して、その場から逃げるように帰りました。
帰って、どうなるのかと、どきどきしながら返事を待っていました。
すると……、次の日の夕方、彼女から電話がかかってきました。
私は結果を聞くのが怖くて、着信のところで彼女の名前が出ていても、電話に出るのを一瞬ためらいました。
しかし、思い切って、電話に出ることにしました。
電話の向こうでは、彼女はいつものトーンで話を始め、昨日のラブレターのことなんて忘れているかのようでした。
しかし、彼女も結果を言うのをためらっていて、あえて会話の最初は雑談で紛らせていただけでした。
会話の最後に、一言言ってくれました。
私が、人生で最も忘れられない一言です。
「あなたは私のこと、女性として見ているかもしれないけど、私は友人でいたい。これからも友人でいましょう」
明るく返事をしてくれました。
つまり、振られてしまったのです。
はっきり言わず「友人でいたい」という遠回しな表現を使ってきたところが「うまく断られてしまったな」と感じました。
それから数日が経ち、今までの精神的な苦しみが一気に楽になりました。
多少の「失恋後遺症」は残ってしまっても、今までの苦しみに比べれば、楽になったものでした。
告白をして、白黒はっきりさせたことで、精神的なもやもやに苦しむことがなくなったのです。
私にとって、告白という決断は、大きな決断でした。
しかし、後悔はしていません。
むしろ「あのとき、告白してよかったな」と、今でも心からそう思っています。
もしあのとき、自分の気持ちを伝えていなければ、いまだに後悔が残っていたはずです。
「片思い」とは、本当につらいと思った一件でした。
これが、私の人生の忘れられない思い出の1つになるのでした。