料理の世界には「料理がうまい人は、味を引き出すのがうまい人だ」という格言があります。
1つの素材から多くの味を引き出す腕があれば、実質、多くの素材を手にしているのも同然です。
テレビなどで優れた料理人が腕をふるい、見事な手さばきで料理を作る場面を見たことがあるのではないでしょうか。
人を魅了するような料理を作る天才的な料理人は、特別な素材ばかりを使って料理しているわけではありません。
日常、どこにでもあるような平々凡々とした素材を使って、料理をします。
うまいのは、素材の使い方です。
煮たり焼いたりすりつぶしたり、素材の味を引き出します。
また、意外な組み合わせによって、素材に隠された魅力を引き出せることもあります。
たとえば「ニンジン」という1つの素材で考えてみましょう。
どこのスーパーでも置いてある、ごくごく普通の食材です。
そのままでは、固くておいしくないと感じる人が多いニンジンですが、調理の仕方しだいです。
ゆでれば柔らかくなる。
細かく刻めば、食べやすくなる。
ミキサーに入れれば、野菜ジュースの隠し味にできる。
あの濃い色は、食を彩る素材にもなる。
活用の仕方しだいによっては、ニンジンはいかようにも変化できます。
いかに、1つの素材から多くの可能性を引き出せるか。
使い方や見方を変えれば、ニンジンには隠された魅力がたくさんあります。
それを発見して生かすのが、優れた料理人の腕です。
子育てがうまい人も、同じ話です。
もちろん生まれ持った子どもの素質によって、子育てのしやすさや可能性も変わることもあるでしょう。
しかし、本当に子育てがうまい人は、子どもをさまざまな面から見つめ、褒められる点を発見するのが上手な親です。
どんな子どもにも、必ずいいところがあります。
それを見つけられるかどうかは「見方」がポイントです。
声が大きいというのは「はきはき話すことができる」という長所になります。
ゆっくり行動するのは「落ち着いて行動できている」という長所です。
自己主張が強い子どもというのは「自分の考えをしっかり持っている」という長所ということです。
大切なことは、子どもをさまざまな面から観察し、たくさん褒めることです。
その中には、思いがけない可能性を見いだすことができるかもしれません。
いかにたくさん褒められるかは、親の手腕にかかっているのです。