『ワンダー 君は太陽』という映画があります。
主人公のオギーは生まれつきの遺伝子疾患があって、人とは違う顔で生まれてきました。
そのためずっと学校に行ったことがありませんでした。
そんななかオギーが10歳のとき、学校に行くことを決意します。
初登校の日、ホールルームの時間で担任のブラウン先生が紹介した言葉があります。
「正しいこと、親切なこと。選ぶなら親切なことを」
一見するとどちらも素晴らしいことであり、薦められることのように思えます。
しかし心がけるなら、正しいことより親切なことのほうが賢明と説いているのです。
なぜ正しいことより親切なことを優先させるのか。
何が正しいかは、人によって異なるからです。
自分にとって正しいことでも、相手にとってはそうでないこともあります。
たとえば、運動することは正しいことと思われがちですが、実際は難しい問題です。
先天的な病気のため、運動したくてもできない人もいます。
事情があって運動できない人は、正しいことができないことになります。
世間一般に食事は残さず食べることは正しいこととされていますが、本当にそうでしょうか。
もちろん作ってくださった方々のことを考えれば食べきるのが理想的ですが、難しいケースも少なくありません。
苦手な食べ物で食べられないこともあります。
アレルギーの問題で食べられないこともあります。
食事は残さず食べるべきといいますが、事情を抱える人の場合、正しいことができないことになります。
医療の現場では現在、患者を死なせないことは正しいこととされていますが、これも非常に難しい問題です。
世の中には複雑な事情のため、安楽死を希望している人がいるという事実もあります。
安楽死をめぐっては現在、慎重な議論が行われています。
正しいことは人によってさまざまであり、絶対的な正解はありません。
法律で定められていることであったとしても、世の中には複雑な事情を抱えている人もいます。
何が正しいかは、その人の状況や価値観が関わっているため、正確に判断することが難しい。
正しさを押し付けると、相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりすることにもなりかねないのです。
その一方で、親切なことは、正しいことと意味が異なります。
親切なことは、あくまで「相手の立場になって優しく接すること」が前提になっています。
もちろん親切の良しあしも人によって異なりますが、相手の都合を尋ねたうえで行うのであれば、迷惑になる心配もありません。
親切なことは、正しいことと比べ、相手に喜んでもらいやすい。
だからこそ「正しいことより親切なこと」なのです。
正しいことと親切なことは、似て非なるものです。
ブラウン先生が紹介した言葉のように「正しいことより親切なこと」を意識すると、人付き合いがうまくいきます。
そして、上手な生き方ができるのです。