説明や説得では、客観的データが必要です。
根拠も証拠も何もないまま「こうです」と言うだけでは、個人の意見にすぎません。
発言力も説得力も乏しく「信用できない」「価値がない」と判断されても仕方ないでしょう。
論理的にきちんと説明するには、根拠となるものを示すことが必要です。
たとえば、文献・実績・検証結果・統計データです。
客観的データは、証拠になります。
正しいデータは、価値が高くて信頼もできます。
「これが根拠です」「こういうデータがあります」と言えば、説得力につながります。
根拠やデータの数も、1つではなく複数あれば、ますます説得力が増します。
しかし、中にはどうしても客観的データが足りないこともあるでしょう。
客観的データが足りないと、説得材料も足りなくなります。
特にビジネスでは、データが不十分という場面がたびたびあります。
完全に新規の分野なら、そもそもまだデータが存在しない状況が普通です。
客観的データがなければ、どう説明するのか。
そんなときに役立つのは「経験」です。
客観的データが足りないとき、次の一言を使ってみましょう。
「客観的データではないのですが、私の経験上、○○です」
客観的データの代わりに、自分の経験を根拠にして語るのです。
もちろん信頼できるデータではありませんが、経験は、根拠の補完として使えます。
その分野に携わるプロの1人として、自分の経験を述べることはマナー違反ではありません。
少なくとも1つの意見として尊重されるでしょう。
もし仕事に取り組んでいるのが、個人ではなく団体なら「私の経験」ではなく「私たちの経験」というフレーズも有効です。
集団による経験談・経験則なら、人数が多い分だけ説得力が増します。
同じ意見を共有する人が多ければ多いほど、発言力も高くなります。
あくまで客観的データが足りないときの手段ですが、経験で語る方法を知っておいて損はないでしょう。
ただし、経験で語るなら、あくまで一部にとどめておくのが適切です。
何から何まで経験を根拠にして語るのは、いくら客観的データが足りないとはいえ、不適切です。
経験で語るなら、必要最小限にとどめ、大半は、できるだけ客観的データを示すようにしましょう。