箸の使い方には、仏教の影響を受けているものが大半を占めています。
「素材の異なる箸を使ってはいけない」というタブーも、その1つです。
それくらいいいだろうと思うのですが、単純な話ではありません。
素材の異なる箸を使うのは、見た目に違和感があるというのは当然ですね。
実はこのほかにも、重要な意味が含まれています。
仏教では、死者を火葬した後、骨を骨壺に入れます。
地域にもよりますが、一般的にわざと素材の異なる箸で骨をつかみ、骨壺に入れます。
一般的には、木と竹の箸を一対にして使うことが多いようです。
なぜ、わざと異なる箸を使うのでしょうか。
2つの深い意味が込められています。
通常、身内がなくなるというのは、大変ショックの大きい出来事です。
動揺して取り乱すのが普通です。
そういう場合、逆に箸が揃っているのは不自然です。
「箸が揃っているかどうかも気づかないほど、動揺している」
動揺したショックを受けていることを表現するために、わざと異質の箸を対にして使うのです。
素材の異なる箸を使うことは「この世とあの世を区別する」という意味があります。
骨をつかんでいる人は生きていますが、箸でつかんでいる骨は死んでしまった人です。
骨をつかんでいる人まで、つられて死を招いてしまわないよう、わざと異質の箸を使うとされています。
さて、これで異質の箸を使ってはいけない理由がわかりましたね。
もちろん火葬の際なら異質の箸を使うのはいいのですが、食事の場ではタブーです。
死を連想させるため、大変縁起が悪いのです。