猫は犬に比べて、人との歴史がまだ浅い動物です。
犬はおよそ15,000年もの前から人と生活していたことが確認されています。
まだ人が文明というものを築くはるか以前の大昔から、すでに付き合いが始まっていました。
一方、猫は人類が文明を築き始めたおよそ4,000年前から、人との付き合いが始まったとされています。
猫が人と暮らし始めた最初の国は、4,000年前のエジプト地方です。
当時のエジプトはナイル川のおかげで、繁栄の絶頂に達していました。
「エジプトはナイルのたまもの」といわれます。
ナイル川があるおかげで、ナイル川流域の農業が盛んになる。
農業が盛んになるおかげで、人や食料など多くの資源が集まる。
その結果、エジプトは四大文明とたたえられるほど栄えました。
しかし、ナイル川のおかげで農業が盛んになりましたが、悩みもありました。
せっかく取れた穀物を、ネズミが荒らしていました。
ネズミは、繁殖性の高い小動物です。
一度に、何匹も産みます。
なんと10匹以上生むこともあるようです。
「ネズミ算」という言葉があるとおり、急速に増加し、あっという間に何千何万ものネズミたちに膨れあがりました。
当時の人は、小さなネズミの大量繁殖にかなり頭を悩まされていたようです。
そこで登場したのが、猫です。
猫はネズミを捕らえて食べる習性があります。
体も小さいので、ネズミが隠れるような小さな穴も入っていけます。
猫の習性に目をつけたエジプト人が、ネズミ対策として猫を飼い始め、人とのつながりを持つきっかけになったとされています。
さて、面白いのはここからです。
人と付き合いが始まったのはいいですが、思わぬ展開になります。
当時のエジプトでは、太陽を神としてまつっていました。
猫は小さな明かりがあれば、目が光る特殊な特徴があります。
猫の目の網膜に「タペタム」という光を反射させる特殊な膜があるためです。
単に光を反射させているだけですが、当時のエジプト人はそれを猫の中に太陽神ラーが宿っていると受け取ったようです。
また、猫の目の瞳孔にも着目しました。
猫の瞳孔は、細長い形をしていますね。
草と草のわずかな隙間でものぞけるように進化した結果ですが、当時の人は三日月形の瞳孔を「月の満ち欠け」と見立てたようです。
太陽のように光る目。
月の満ちかけのような三日月形の瞳孔。
こうした理由をあわせ持った猫は、太陽神ラーの化身が眠っているに違いないと思われるようになりました。
神の化身としてまつられるようになったのです。