「猫に芸を覚えさせたい」
猫を飼い始めると、ふとそういう思いを抱くことでしょう。
犬なら「お手」「伏せ」「待て」など芸を覚えるのが早いので、猫もしつければうまく芸を覚えるのではないかと思います。
しかし、なかなかそうはいきません。
そもそもなぜ、犬は芸を覚えやすいのかというと、飼い主の言うことを聞きやすい社会を形成しているからです。
犬の場合は「団体」で行動し、リーダーを頂点とした「縦社会」です。
犬の祖先が草原で暮らしていたころ、敵と戦うために、集団で行動していました。
1匹では貧弱ですが、集団で行動すれば大きな力を発揮できます。
その集団をまとめる役としてリーダーがいましたし、リーダーの指示にも従順です。
「リーダーの行くところならどこへでも行く。言うことは何でも聞く」
だからこそ犬は、飼い主さえいれば引っ越しをいといませんし、飼い主に従順です。
したがって、芸も覚えやすいです。
しかし、猫の場合は、少し違います。
猫の場合は「単独」で行動する「平ら社会」です。
ボス猫以外は、上下関係はほとんどない平らな社会です。
猫の祖先は森で暮らしていて、複雑な地形のため、単独で行動していました。
多くの木々があるため、単独行動のほうが動きやすく、生存に適していました。
ボス猫の存在もいますが、犬のリーダーとは少し存在意義が違います。
どちらかというと「ほかの猫より少し圧力がある」といった程度です。
犬とは違い、ボス猫の後にほかの猫たちがつくようなことはありません。
むしろ、怖がって近寄らないという程度です。
「ボス猫は怖いから、近づかない」という感じです。
そうした犬と猫とでは、形成する社会が異なるため、芸をしつけるときも同じ要領とはいきません。
犬はリーダーの言うことをよく聞くので芸を覚えますが、猫はリーダーという認識もないため、言うことを聞いてくれません。
あまり無理に覚えさせようとすると、逆に嫌われてしまう始末。
事実、世界のサーカス団では、犬を使ったサーカス団は数多く存在しますが、猫を使ったサーカス団は少ない。
このことからも、猫に芸を覚えさせるのは、難しいと考えていいでしょう。
しかし、難しいからと言って、教えられないわけではありません。
唯一希望があるとすれば「餌を使ってしつけること」です。
猫は、ボスの後には付いていきませんが、餌をくれる人の後ならついていきます。
猫は、餌に対しては目がありません。
たとえば「お手」を教えるとき、言うとおりにすれば一口の餌を与えるようにします。
餌のやりすぎに注意しながら、根気よくしつけてみましょう。
犬より大変長い時間はかかると思いますが、次第に覚えてくれるはずです。