アメリカ留学中、8階建てのアパートで、私は4階の部屋で暮らしていました。
あることがきっかけで、同じ階に日本人女性が住んでいるのを知りました。
アメリカで日本人と出会うと仲間意識が生まれやすく、嬉しくなります。
しかも自分と同じ年齢だったので、すぐ仲良くなりました。
彼女は、水商売をやっているキャバクラ嬢でした。
夜になると出かけ、朝方になると帰ってきました。
彼女の乗っている車は、お客さんの男性から買ってもらった高級車でした。
いつもきらきら光る服を着ていて、どぎつい香水が印象的で、異様な雰囲気がありました。
田舎出身の自分にとって、新鮮な刺激でした。
キャバクラ嬢という接客業のためか、彼女は何でもざっくばらんに話をしてくれました。
「男性客ばかりを相手にするのは疲れる」という話。
「キャバクラにも競争があり、表と裏がある」という話。
「友人と大喧嘩をした」という話。
何も隠さず、心中をさらけ出したストレートな話しぶりでした。
私のことも、すぐ「タカヒロ」と呼び捨てになりました。
同じ年齢という共通点も後押しし、彼女とは妙に親しくなりました。
そんなある日です。
彼女の様子が、少し変な日がありました。
いつもより話し方がたどたどしかったり、落ち着きがなかったりなど、普段の彼女らしくありません。
「どうしたの。何かあったの」と聞いても「別に何もない」と答えます。
「たまたま機嫌が悪かったのだろう」と思い、軽く流していました。
次の日、彼女から連絡があり、理由を知りました。
「タカヒロ、ごめんね。昨日の私が変だった理由がわかった。生理前だったから情緒が不安定になっていたみたい」
「タカヒロ、月経前症候群という言葉を聞いたことがある?」と尋ねてきました。
「え? なにそれ」
「生理中」に女性の体調が悪くなるというのはすでに知っていましたが「生理前」というのは初耳でした。
聞くところによると、女性は「生理中」だけでなく「生理前」にも精神的な不安定に襲われるとのこと。
「月経前症候群(PMS ※Premenstrual Syndrome)」と呼ばれているそうです。
私の勉強不足もいけませんでしたが、初めて知りました。
これは言ってくれないと、男性は理解できません。
個人差も大きく、多くの女性は苦しんでいるそうです。
私の場合、たまたま何でもストレートに話をする女友達が身近にいてくれたことで、その事情を知ることができました。
しかし、多くの場合、女性は男性に対して生理の話は抵抗があるので、男性が知る機会は少ないはずです。
ましてや「生理前」という事情を知らない人も多いはずです。
夫婦関係も同じです。
生理中だけでなく、生理前にも情緒が不安定になることを、きちんと夫に話をすることです。
生理の苦しみをわかってくれないと「単に妻が怠けているだけだ」と思われては、嫌な気持ちになりますね。
男性には生理がありませんから、生理の苦しみや状況は女性から話をしなければいけません。
生理の話を異性にするのに抵抗はあることでしょうが、夫婦ですから話をしておきましょう。
当然、夫は生理の経験がありませんから、知らない可能性は考えられます。
夫がそういう事情を理解してくれれば、妻のいつもとは違う言動を理解してくれるようになります。
生理中、夫はいつも以上に優しくしてくれるでしょう。