同じ本でも、ときを変えて読み返してみると感じ方が変わっていることがあります。
本から「何を学ぶか」は「いつ読むか」がポイントです。
同じことを書いている本でも、あるときには一番に刺激されることもあれば、またあるときには4番に刺激されるときもあります。
読む本人が、そのときにどんな悩みを抱えているかで、本から何を学ぶかのアンテナが変わってくるのです。
同じ本でも、読む時期を変えれば、同じでない本になるのです。
これは本だけに限らず、人や物や場所にも同じことが当てはまります。
私が、映画『蛍の墓』を見たときのことです。
これは戦時中、親を亡くした幼い2人の行く末を描いた物語です。
主人公の2人は、親も家もなくし、仕方なく親戚のおばさんのところへ泊まらせてもらいます。
そこで主人公の2人が楽しそうにピアノを弾くシーンがあります。
親戚のおばさんは「みんなが戦争で頑張っているというのに、のんきに歌なんか歌うのはやめなさい」と怒鳴りつけます。
まだ当時、小さかった私は「ひどいおばさん」と思い、主人公2人に味方していました。
それが、私が20歳を過ぎたくらいから、意識が現実的に変わります。
そのときにもう一度同じシーンを見ると、受ける刺激が違うのです。
私も、怒鳴った親戚のおばさんと同じ考えで「みんな、戦争で頑張っているのに」という考え方になります。
特攻隊に代表される国のために死んでいく軍人たちと比べれば、主人公の2人がピアノを弾いているシーンは甘すぎて見えたのです。
受ける刺激は、自分がいつ見るか、読むか、経験するかに左右されます。
子どものころに親に「ばか、ばか」と言っていた娘が、今度は自分が親になり、初めて親の本当の苦労がわかることと同じです。
大切なことは「いつ」であるかということです。
いつ本を読むか、いつ映画を見るか、いつ親と話をするかです。
心の状態に応じて、受ける刺激が変わってくるのです。