猫が、突然、辺りをきょろきょろ見回し始めることがあります。
その視線の先に何かあるのかと目をやりますが、何もない。
それでも猫は、何かを追っているかのように、きょろきょろしています。
何かあって視線をやっているならわかります。
しかし、何もないのに、きょろきょろされると、飼い主としては怖い気持ちになります。
「もしやこの家は、悪い霊に取りつかれでもしているのか」
何か幽霊でも見えているのではないかと、悪い想像を膨らませてしまいます。
実は、猫がきょろきょろするのは「見えている」のではなく「聞こえている」場合が大半のようです。
初めに言っておくと、猫の視力は悪いです。
0.1から0.3くらいの視力しかないと言われ、人間よりはるかに悪い。
10メートルも離れていると、ぼやけているようにしか見えません。
しかし、その視力を補えるほどの、鋭い聴覚があります。
猫はもともと夜行性であり、視力はあまり重要ではありませんでした。
では、真っ暗な森の中で、どう動物の動きを察知したかというと「音」です。
歩く足音、小さな鳴き声、飛んでいる音。
こうした音から、外敵までの距離、大きさ、動きの様子などを把握していました。
犬も聴覚が優れている生き物ですが、それ以上に優れています。
特に優れているのは、高音を聞き分ける能力です。
低い音は、人も犬も猫も大差はありませんが、高音となると猫が圧倒的に優れています。
なんと超音波まで聞き分けられます。
人間の場合は、最高20キロヘルツの高音を聞き分けるのが限界です。
犬の場合は40キロヘルツ、猫の場合は80キロヘルツという超音波の領域まで聞き分けられます。
人にも犬にもまったく聞こえない高音でさえも、猫なら聞けます。
何もないのにきょろきょろしている場合、数十メートル先の猫や犬の歩く足音、鳥の飛ぶ音などに反応しているのでしょう。
もしくは、屋根の上にいるネズミのかすかな鳴き声に反応しているのかもしれません。
いずれにせよ人間には聞こえない音を聞き取っていると思っていいでしょう。
幽霊の姿が見えているわけではないようです。