私が幼いころ、母からは「よく遊べ」と教えられてきました。
もちろん勉強もしなさいと一喝されたこともありましたが、勉強部屋に缶詰にされることはありませんでした。
塾に通うことも強制はされませんでした。
「貴博が行きたくなったら行きなさい」と言われていました。
初めて塾に通い始めたのは中学1年からであり、クラスでは最も遅いほうでした。
母は「勉強も大切だが遊びも大切」と言います。
遊びを勧める母は、遊びからしか学べない「貴重な学問」に気づいていたのでしょう。
事実、外で遊びに出かけることで多くのことを学べます。
よく遊ぶことで、友人との人間関係を学びます。
友人関係との距離感は、泣いたり笑ったりしながら、実際に友人と触れ合うことで感じられます。
お金の使い方で失敗することもあれば、財布を落として絶望を感じることもありました。
トンボ、カエル、イモムシなど、そうした昆虫は外に出ないと触れることはありません。
部屋の中だけでは味わえない外界の刺激は、やはり体を通して体験するのが一番勉強になります。
外に出て、たくさんの遊びの中で、教科書の中にはない別の勉強をさせていました。
遊びとはいえ、暇つぶしではなく、もはや勉強です。
今になって思えば、それを母は気づいていたのでしょう。
学校ではできない勉強があるからこそ、遊びを勧めていました。
人間にとって大切なことは、学校の勉強だけではありません。
よく勉強して成績優秀になり、いい大学に入り、いい会社に就職するのは、素晴らしい道のように思えます。
しかし、その人に「遊び」が欠けていれば、いずれ苦労することでしょう。
遊びの仕方を知らなければ、どうストレスを吐き出すのでしょうか。
人間関係をどこで学ぶのでしょうか。
金銭感覚がないまま大人になれば、お金の使い方で大きな失敗をすることでしょう。
昆虫という基本的な会話もついていけなくなります。
こうした自然な感覚は、どれだけ幼いころに遊んだかが大切です。
よく遊ぶことも、勉強なのです。