執筆者:水口貴博

数字のトリックを見破る30の方法

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ポイント制に、得はない。

ポイント制に、得はない。 | 数字のトリックを見破る30の方法

チェーン店でよく採用されているのが「ポイント制」です。

商品を購入するごとにポイントが貯まり、ポイントに応じて商品を交換できる仕組みです。

典型的な例でいうと「1ポイント1円」です。

1,000ポイントたまれば、1,000円の商品を購入できます。

ポイントが貯まればたまるほど、高額の商品と交換できるようになり、お得感があります。

ここが、売る側のうまいところ。

流れを追って説明します。

10,000円の商品を買います。

10,000円の10パーセント分がポイントになるとすれば、1,000ポイント(1,000円分)です。

つまり、1,000円もらったのと同じです。

ポイント1,000を使って1,000円の商品と交換すれば、無料で商品を手に入れられ「得をした」と思います。

お金を一銭も出さずに、1,000円分の商品を購入できれば、誰でも得をしたと思います。

しかし、ここが勘違いです。

ポイント制は、店側にお金を預けている状態にすぎません。

10,000円の商品を購入し、そのうち1,000円を預けている状態です。

お金を預けた代わりに「ポイント」という名の債券を、債権者である消費者が受け取る仕組みです。

1,000ポイントが発生するとは、1,000円分の債券を手に入れたと思えばわかりやすいことでしょう。

店側は、そもそも9,000円で売れるところを、少し高めに価格を設定します。

「少し高いけど、ポイントが貯まって交換できるなら安い」

高ければ売れにくいと考えがちですが、ポイント制度があるため、消費者はむしろ得をする感覚のほうが強くなります。

少しだけ高めに商品を購入させて、店側にお金を預けさせ、ポイントという債券を消費者に発行します。

ある日、預けている金額を商品として還元しているだけです。

結論から言いますと、消費者は得をしていません。

むしろ損をしていると言っていいでしょう。

なぜ損をしているのか。

続いて、損をしている説明をします。

ポイント制は債券であり、ポイントという債券がある程度たまれば、お金を商品として交換して還元する仕組みです。

店に預けておいたお金を返してもらうだけですから、得はありません。

忘れてならないのは、お金を店に預けている間は、お金が増えることはありません。

銀行なら利子がつき、預けている間、少ないながらもお金が増えます。

しかし、店にお金を預けている間は、無利子でお金を預けているのですから、まったく増えないのです。

この手法のうまいところは、消費者を得した気分にさせられる点です。

ポイントが貯まれば、後からそのポイント分の商品を交換できるので、得をした気分になります。

「もっとポイントを貯めたい。そうすれば高額の商品を交換してもらえる。だからもっと商品を購入して、ポイントを貯めよう」

購入意欲に拍車がかかり、勢いで不要なものまで購入します。

最後に、最も店側が期待しているのは「消費者の囲い込みができる」ということです。

店のポイントカードは、その系列のお店でしか使えません。

ですので、ほかのお店で買うような浮気はしなくなります。

ほかのお店で買うと、せっかくたまっているポイントが使えないため、使えるお店で買おうとします。

買えば買うほどポイントが貯まりますから、商品を買うなら、その系列のお店でたくさん買おうと思います。

だから消費者を囲い込むことができ、店側の売り上げもその分アップします。

お金を無利子で貸しているポイント制には、まったく得はないのです。

得があるのは、売る側だけ。

購入する側には、得をしているような錯覚を起こさせているだけです。

私なら、むやみにポイントは貯めず、すぐ使います。

貯めても無利子なので、お金が増えないのですから、貯めても意味がありません。

あなたも「ポイント制」に騙されていないでしょうか。

お店も、資本主義の中でお金のやりくりをして商売しています。

お客に無料でお金をあげるようなうまい話は、最初からないと思うことです。

数字のトリックを見破る方法(6)
  • ポイントの数字に、騙されないようにする。
平凡な消費者は「値段→必要性」の順で考える。
賢い消費者は「必要性→値段」の順で考える。

数字のトリックを見破る30の方法

  1. 数字のトリックに騙されるな。
  2. 安くなったのではない。
    初めからその価格なのだ。
  3. 4桁と3桁の違いに、騙されない。
  4. 賢い消費者は、値段を四捨五入して考える。
  5. わざと期間を書かない期間限定サービス。
  6. ポイント制に、得はない。
  7. 平凡な消費者は「値段→必要性」の順で考える。
    賢い消費者は「必要性→値段」の順で考える。
  8. 数字で考えると、ウエイターが1人しかいない理由が見えてくる。
  9. クレジットカードを使うことで、数字がわからなくなる。
  10. 「無料」という甘い言葉を信じると、損をする。
  11. 「送料は当社が負担」は、送料を商品に上乗せしているだけ。
  12. 同じ効果でも、選択によって大幅な節約ができる。
  13. 数字で考えれば、真実が見えてくる。
  14. 安くなったパーセンテージではなく、金額を見る。
  15. 実績だけを見ていると、騙される。
    どのくらいの期間での実績かを考える。
  16. 英語の結果は、仕事の結果ではない。
  17. お金持ちほど、けちである。
  18. どんなに安くても、価値を感じないところにお金を使わない。
  19. 世の中に、本当の無料メディアはない。
  20. 給料の安さが、あなたに知恵を振り絞らせる機会を与える。
  21. ウインドーに張り出されている優良物件は、客引きである。
  22. 節約のために、自炊が一番とは限らない。
  23. 購入後の維持費の計算を、忘れていませんか。
  24. 金額が大きくなると、金銭感覚が鈍くなる。
  25. 試験結果の90点は、ほぼ100点と考えていい。
  26. 「喫煙者の24時間」は「禁煙者の24時間」以下である。
  27. 金銭感覚を養うためには、1万円札1枚より、1,000円札10枚のほうがいい。
  28. 量は同じでも、単位を変えてしまうだけで、印象が変わってしまう。
  29. 人間は、切りのいい数字が好き。
  30. 言葉の表現を変えるだけで、印象が変わってしまう。

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