「16時から、1階の受付で無料商品券と交換します」
大型デパートでは、ときおり、こうしたアナウンスが流れます。
あなたも一度は、耳にしたことがあるでしょう。
内容は、そのほかにもさまざまな種類があります。
「16時から駐車場が無料になるチケットをお配りします」
「16時から、触れ合い広場でイベントがあります。入場は無料です」
「16時から、500円分の商品券を、無料でお配りします」
このように16時になれば、一部の料金が無料になるおいしい話です。
「無料になるの! だったら行かなきゃ損!」
誰でもそう思います。
さて、ここがわなです。
当然、無料になるほうが得ですから、16時まで時間をうまく過ごそうと思います。
16時まで何をしようかというと、デパート内をうろうろするしかありません。
まずこの16時のイベントは、少しでも長くお客を店内にとどめておくことが、1つの目的です。
16時まで過ごす人たちのおかげで、デパート内の売り上げが上がります。
初めは買いたいと思わなくても、見ているうちに「そろそろ買い換え時かな」と必要性を感じ始め、買いたくなります。
16時という中途半端な時間も意味があります。
レストランコーナーでは、お昼になれば昼食で賑わい、夕方になれば夕食で賑わいます。
しかし、15時のような中途半端な時間は、お客さんが少なくなります。
お昼に食事をした人たちが、小腹がすいてくる15時あたりに「コーヒーでも」と思いレストランへ入ります。
またレストランの売り上げが向上します。
極めつけがあります。
16時までデパートにいれば、自宅に帰るころはちょうど夕食を作り始める時間です。
さあ、もうお気づきですね。
「16時までいたなら、せっかくだから夕食のおかずも買って帰ろう」
16時までデパートにいるなら、夕食の食材もついでに買って帰ろうと思います。
またまた売り上げが向上します。
デパート側が無料券を配って一時的に損失を出しても、それ以上の売り上げにつながる仕組みです。
損が儲けを上回る計算が、初めからあります。
16時に無料券を手に入れたとしても、無料分以上のお金を16時前後に使うことで、消費者は得どころか損をしています。
無料券を配り、デパート側が損をしているようで得をしています。
この仕組みに、気づくことです。
では、賢い消費者はどうするのかというと、買い物が終われば、さっさと店を出ていきます。
「16時から無料の券をお配りします」というおいしい話があったとしても、見向きもせずデパートを離れます。
何でもそうですが、おいしい話はありません。
おいしい話ほど、裏には何か隠れていると思うことです。
それを知っている賢い消費者だからこそ、目的の買い物が終われば、すぐ店を出ていくのです。