私が高校3年のころ、受験勉強のため、朝早くに登校していました。
授業が始まる2時間くらい前に登校して、教室で勉強していました。
たいてい私が一番早く登校するのですが、しばらくして「矢野君」と「田中君」という男子学生も早くやってきました。
「おはよう。水口君、朝早いね」
「矢野君も早いね」
「田中君。おはよう」
朝早いのは、この3人がお決まりのメンバーでした。
教室で3人が朝の挨拶を交わした後、黙々と勉強するというのが毎朝の定番でした。
もちろん勉強をするために早く登校していたので、交わす雑談はほとんどありませんでした。
しんと静まり返った教室で、鉛筆と教科書をめくる音だけが響き渡ります。
しかし、以心伝心はありました。
「同じことを考えているんだね」
「お互いに頑張ろう」
「負けてないぞ」
それは言葉がなくても、わかります。
朝早くから行動するのは、並々ならぬ覚悟がないとできません。
受験に成功したいという強い気持ちがあるからこそ早起きをしようと思いますし、事実、早起きができているのです。
朝に一緒になる3人とは、そんな意識が共通しているので、深い仲になりやすい。
秘めている意識は共通だということは、言葉がなくても感じられました。
いつの間にか友情も芽生えていました。
これが朝の出会いの素晴らしい点なのです。
私は今でも矢野君と田中君とは、受験勉強を共に戦った人として友情があります。
そこには、いい空気があり、友情が芽生えやすい。
朝は人が少ないものです。
少人数になりやすい。
だから、仲良くなりやすい。
男同士なら、深い友情になる可能性があります。
男女なら、恋愛のきっかけになるでしょう。
もしあのとき、朝早く来る人が女性だったら、恋愛が生まれていたかもしれません。
そうすると、また別の人生を歩んでいたことでしょう。
深い人間関係のきっかけは、朝にあるのです。