あれは忘れもしない、ロサンゼルス滞在中のことです。
昼間、ロサンゼルスの街なかを、1人で歩いていたことがありました。
突然、自転車に乗った日焼けした、スパニッシュ系の男2人が、さっと後ろからやってきて、私の両腕をつかみました。
「I have a gun. Give me a money.(銃を持っている。金を出せ)」
「え?」という驚きと焦りです。
どうやら私が身につけていたグッチの時計が目当てだったようです。
別に人のいない場所ではありません。
幅10メートル以上もある大きな道の脇を歩いていて、周りにすれ違う通行人もいました。
しかし、人通りのあるところでも、事実、襲われてしまった。
銃は見せませんでしたが、周りの人に気づかれないようわざと隠しているのかと思いました。
高価なグッチの時計は、たしかに目立っていました。
かなり焦りました。
そのまま素直に時計を渡すべきか。
走って逃げるべきか。
一瞬動揺しましたが、私は彼ら2人を無視して強気で歩くことにしました。
高校時代は体操部で筋肉はありますし、私も男です。
むかっとした気持ちもあったので、つい強気の態度に出てしまった。
そういう強気の態度がよかったのか、5分くらい無視し続けていると、諦めてどこかへ行ってしまいました。
この5分は、異様に長く感じられた。
内心は、かなり怯えていました。
アメリカは銃社会です。
普通に店で売っています。
「銃を持っている」と言われても不思議ではありません。
その経験があってから、私の安全意識は変わりました。
以前は「海外で多少のおしゃれくらいいいではないか」と思っていました。
海外に慣れると、つい油断をしがちです。
慣れたときこそ、危ない。
実際に命に関わる体験を一度でも味わってからというもの、海外でおしゃれをするのはやめるようになりました。
今、私は地味な格好で海外旅行へ出かけます。
特に派手な高級ブランドは、要注意です。
泥棒に「襲ってください」というアピールをしているようなものです。
まだ私が男だったからよかった。
女性だったら、いくら強きの姿勢とはいえ、スパニッシュの男2人は力ずくで襲っていたかもしれない。
旅行先の治安にもよりますが、やはりどこでも危険と考えたほうがいいでしょう。
特に高級ブランドを身につけた女性が1人で外を歩くのは、昼間でも危ないと考えたほうがいい。
私の場合、昼間の人通りのある大きな道で襲われたくらいです。
何だかんだ言って、最後に大切なのは「見栄」より「命」です。