「スーツケースにベルトを締めておけ!」
父が、海外旅行に行く私にいつもかける言葉です。
父は現役のころ、仕事の都合で頻繁に海外に行くことがありました。
その海外経験からのアドバイスで「スーツケースには、鍵だけでなく、ベルトも必ず締めておくように」とよく言われました。
不思議なアドバイスです。
スーツケースには、初めから鍵がかかっています。
さらにセキュリティーの高いタイプになると、暗証番号によるロックまであり、2重に鍵がかかっているものがあります。
これだけしっかりしていれば、十分ではないかと思われます。
では、なぜわざわざベルトまで締めるのか。
父は、空港の手荷物受け取り口で、スーツケースがはだけたまま、ベルトコンベヤーから出てくるのを目撃したと言います。
明らかにスーツケースが一度開けられた形跡があったり、中のものが一部なくなっていたりする被害も耳にしたと言います。
なぜ、そんなことになるのでしょうか。
飛行機でスーツケースを運ぶ身になれば、わかります。
仕事を続けていると、単調になったり疲れたりします。
そうすると、スーツケースを乱暴に投げて運ぶことがあります。
放り投げられると、鍵を頑丈にかけていても、落ちたときの衝撃で鍵が壊れ、スーツケースが開いてしまうことがあります。
スーツケースの中からものがあふれ、漏れなく拾っているつもりでも、1つくらい入れ忘れてしまう可能性もあります。
だからこそ、父は「スーツケースにベルトを締めておけ」と力説します。
ベルトを締めておくだけで、衝撃に強くなります。
たとえ鍵が壊れてしまっても、ベルトの強度ではだけるのを防ぐ効果もあります。
泥棒の立場になっても、ベルトをほどいてまでスーツケースを開けようとするのは、面倒と思い、被害に遭いにくくなります。
スーツケースのベルトは、防犯面でも効果があるのです。