「早くマナーを覚えてもらいたい」
「早くしつけを覚えてほしい」
おそらく、これはほとんどすべての飼い主に共通する願いでしょう。
やはり面倒がかかるのは大変なので、少しでも早くしつけを覚えて、マナーや良識ある犬に育ってもらいたいと願います。
一見、当たり前のことのように思えます。
しかし、本当にそうでしょうか。
たとえばの話です。
もし、1日であらゆるしつけのすべてを覚えたとします。
すると、次の日から何もしなくてよくなります。
これは楽なようで、これほどつらいことはありません。
ほかの飼い主が「なかなか犬がしつけを覚えてくれない」という悩みに共感できないため、飼い主との話についていけなくなります。
また、何でもすぐ覚えてくれるなら「飼い主の私がいなくても、この子だけで生きていけるのではないか」と思います。
覚えがよすぎるのは、嬉しいようで、悲しいです。
しつけは早ければいいわけではありません。
「しつけは、早くしなければいけない」という常識を破ってください。
逆です。
しつけは、時間をかけるから、いい。
覚えるのが遅いからこそ、毎日の楽しみになります。
「今週はこれができるようになった。来週はこれを覚えさせよう。再来週はこれを覚えさせたい」
ゆっくりじわじわだからこそ、楽しみが持続します。
たとえ、時間がかかってもいい。
しつけに手間と時間がかかるからこそ、他の飼い主と「ペットを飼うのは大変ね」と共感でき、友人が増えやすくなります。
苦労も悩みも、しばらく経てば、いい思い出になるでしょう。
なかなか覚えの悪い犬だからこそ「私がいなければこの子だけでは生きていけない」と思えるようになります。
仕事でへこたれても「仕事を辞めれば稼ぎがなくなる。飼っている犬の食費を誰が稼ぐのだ」と思います。
すると、仕事へのやる気へと変わります。
1人では何もできない犬がいるからこそ、底力がめきめき出るようになります。
なにより、適度に物覚えが悪いほうが、飼い主を笑わせてくれます。
おっちょこちょいで、とんちんかんで、間抜けな犬の姿は、飼い主を笑わせてくれます。
癒しになります。
苦労や悩みも多い分、笑いが絶えない日常になり、飼い主の生活は華やかになります。
だからこそ、しつけは時間がかかるほうがいい。
「この子のために頑張ろう」という気になり、今日も明日も頑張れるのです。