私は思春期のころ、両親との会話が少なくなった時期がありました。
水口貴博は昔から両親と仲がいいと思っている読者がいるかもしれませんが、そうではありません。
関係がよくない時期がありました。
12歳から13歳にかけて、急激に両親との関係が薄くなりました。
人目を気にする思春期ということもあり、古い考えや干渉をしてくる両親に対して苦手意識が働き始めました。
自分から両親に対して壁を作っていました。
両親と溝を作ることがかっこいいと勘違いをしていた時期がありました。
両親に挨拶をすることもなければ、父の日や母の日に何かを贈るということもありませんでした。
考えもしませんでした。
両親との関係が悪くなったその時期から、普段の友人関係も同時に悪くなり始めました。
一番基本的な両親との関係が悪くなると、その悪いオーラのようなものがほかの人間関係へと知らない間に飛び火します。
あらゆる人間関係の原点は、両親との関係です。
家庭が安定しないのに、外でつながる人間関係が安定するはずがありません。
なかなか友人との関係がうまくいかなくて原因を探しました。
その根本的原因は、私と両親との関係が発端でした。
私は19歳のころから1人で親元を離れ、アメリカに留学するようになりました。
事情とはいえ、いきなり海外で一人暮らしです。
自炊・掃除・洗濯・買い物などあらゆることを、自分一人でしなければなりません。
文化も違うし、言葉も知らないし、完全に見知らぬ土地です。
これには本当に参りました。
たった1人で生活をするようになり、初めて両親からどれほど世話を受けていたのかに気づきました。
そのころからです。
私はとんだ勘違いをしていたことに気づき始めました。
一度、両親の元を離れて生活すると、目が覚めます。
自分の非力さに気づかざるを得ないと同時に、どれだけ両親から大きな恩恵を受けていたのかに気づきます。
今まではあまりに身近すぎる存在だったので、大きすぎて見えませんでした。
その時期から、私の両親への態度が少しずつ丸くなっていきました。
思春期のころは口にしなかった「ありがとう」という言葉を、少しずつではありますが、言えるようになりました。
また、父の日や母の日なんて気にもしなかったのが、気になるようになりました。
そういうものです。
自分の力のなさに気づくことで、他者への感謝が自然と湧き起こってくるようになります。
両親との関係がよくなれば、そのほかの友人関係、恩師との関係も向上します。
基本は両親です。
両親を乗り越えられれば、誰とでもうまくやっていけます。
今回は「言葉の習慣」をテーマにした内容です。
にもかかわらず、なぜ両親との話が出るのかというと、まさに人間関係の原点だからです。
言葉の問題は、まず両親との関係がよくならないと根本的に直りにくい。
それは自分が体験したので、痛いほどよくわかります。
自分の言葉を正す前に、まず両親との関係を正しましょう。
往々にして思春期あたりから関係が悪くなり、悪くなったままになっています。
その両親との関係がよくなれば、普段の言葉遣いも自然とよくなります。
両親に当たり前の感謝の言葉を口にできるようになれば、後はすべての人間関係がうまく行き始めるのです。