本文の中で大切なところは、親切に書き手が太字で書いてくれています。
書き手は、太字のほうが大切なところがわかりやすいと思っているようです。
もちろん受験勉強のような参考書なら、太字にするのはわかります。
あらかじめ、試験に出題されるところを太字で強調しておけば、特に理解を深めるべき点が容易にわかります。
太字のおかげでポイントが把握しやすくなり、学習がはかどるに違いありません。
では、すべての本で太字が必要かというと、そうではありません。
小説や自己啓発書などでは、太字は必要ないと考えています。
事実、一般的な小説には、太字部分がないはずです。
なぜかというと、どこが大切なのかは、それぞれの読者によって感じ方が異なるからです。
書き手が、大切だと思って太字にしたところでも、ほかの人にはまったくの的外れのことがあります。
一方、太字になっていないところで、胸がじんとすることもあるでしょう。
書き手が本の中で太字で書くことは、文章から学べる可能性を制限する行為です。
大切なところを決めるのは、著者のやることではありません。
読み手が感じ取ることです。
どこが大切で、どこに感動するのかは、読者によりますし、時と場合によります。
それは読者の想像力に任せるほうがいいのです。
読者の想像に任せることで、あらゆる見方ができるからです。
深い学びが、促されるのです。