1990年代後半、女子高校生の間で「ルーズソックス」が大はやりしました。
通常のソックスは足のラインに沿ったものですが、ルーズソックスはその名のとおり、足のラインより大きいためたるんでいます。
一見すると、かっこ悪いと感じます。
しかし、人間は「他人の目を意識する生き物」ということを忘れないでください。
そもそもルーズソックスは、自然に発生したものではありません。
ある企業が世の中にブームを作り、商品が売れやすくするためにルーズソックスを考え、発売し始めました。
これまでにない不思議な形をしたソックスは、大変注目を集めました。
女子高校生と言えば、他人の目を意識する年ごろです。
「ルーズソックスの注目性」と「注目されたいという女子高校生」の要望が一致し、急激に広まりました。
また、友人や知人がはいているところを見て、はいていないと気後れするため、真似をしようとします。
同調性を持つのが人間です。
ルーズソックスは、短い期間にもかかわらず全国的に広がりました。
都会のみならず、田舎まで浸透していました。
私はちょうど高校生でしたが、クラスの女子のほとんどはルーズソックスでした。
山奥の田舎でさえ、身につけている人がたくさんいたほどです。
そのくらい広まっていました。
さて、人間は飽きる生き物です。
全国的にブームになったとしても「当たり前」になってしまえば、注目性は低くなります。
人気度が上がりきってしまえば、そもそもルーズソックスが持っていた注目性は、急に低下します。
賢い企業はそのタイミングで、また別の新たなブームを考え出し、広告を打ちます。
ルーズソックスのときと同じように、注目を集めやすいものを、若い人たち向けに発表します。
ルーズソックスは忘れ去られ、次のブームへと以降し始めます。
さて、面白いのはここからです。
あれほど一大ブームを巻き起こしたルーズソックスは、次のブームに移行し始めると、急に古くさく感じます。
「時代に乗っている」と言われたルーズソックスは、一転して「時代遅れ」と笑われるようになります。
これまた、人目を気にする年ごろの人は、強く反応してしまいます。
今まで注目されたい一心で身につけていたルーズソックスを、むしろ身につけるのさえ恥ずかしいと感じ、手放していきます。
「かっこいい」と絶賛されたルーズソックスが「かっこ悪い」と罵られるのですから、世の中は面白いです。
世の中から姿を消してしまいました。
これが、1990年代後半に起こった「ルーズソックス」というブームです。
ブームとは、こういうものです。
ブームは、たしかに時代の1ページの1つです。
それはずっと続くような錯覚を受けます。
しかし「ブームがずっと続く」と考えるのは、早合点です。
必ず、一時的です。
作り出したのが人間であり、また人間心理に乗じてうまく全国展開できますが、人間心理ゆえにいずれ忘れ去られます。
良くも悪くも、ブームです。
現在も、何らかのブームが起こっているはずです。
タレント・お笑い芸人・音楽・ファッションなどジャンルはさまざまですが、ブームとしての特徴は同じです。
急速に全国に広まった後、急速に忘れ去られます。
それに踊らされるかどうかは、あなたがブームの特徴を把握しているかいないかに関係します。
ブームの特徴を知れば、時代の先は見えているはずです。
賢い消費者になり、ブームに流されるのではなく、個性で生きてください。