私は学生時代、親からの仕送りに頼って生活していました。
学生は仕事が勉強ですから、お金の面に関してはもっぱら親からのお金が命綱です。
限られた資金の中で、生活をやりくりしていたものです。
しかし、今思えば、当時の私は金銭感覚を身につけた「つもり」になっていただけでした。
限られた資金の中でやりくりできるようになると、金銭感覚が身についているような感覚になります。
「1カ月を15万円で生活しなさい」と言われ、15万円の範囲で生活ができると「やればできるではないか」と自信をつけます。
でも、本当は、自分で稼いだお金を自分で使うときに、本当の金銭感覚が養われるのです。
自分で作った料理が一番おいしく感じるように、自分で稼いだお金が最も価値を感じます。
親からもらった1万円と自分で稼いだ1万円は、天と地ほどの差があります。
金額の問題ではないのです。
稼ぐために伴ったプロセス・努力・苦労・時間が、問題なのです。
親からの仕送りは、親が稼いだお金です。
そのお金には、努力も苦労も情もありません。
自分のお金でも、軽く使ってしまうのです。
たとえ生活の範囲内でも、痛みを感じないでお金を使うことは、金銭感覚はないということです。
学生時代の私は、勉強不足の青二才だったのです。
本当の金銭感覚は、自分が稼いだお金で生活をするときに、初めてわかります。
自分で稼いだお金で、一人暮らしをするのが一番理想的です。
衝撃的に、金銭感覚というものを、痛みを通じて感じることができるようになります。
「ああ。100円はこれほど重い金額なのだ」
「トイレットペーパーに200円も使うのはもったいないな」
「缶コーヒーが120円もする!」
「電気代がもったいない」
小さな金額に対して、強く敏感に反応するようになります。
たった100円が、重く感じるのです。
今になって学生時代の私を振り返ると、子どもだと思わずにいられません。
親からのお金に頼って生活している間は、本当の金銭感覚は、身につけられないのです。