品性のある人は、景色だけを見て、感動しません。
五感のすべてを総動員させて、見て、聞いて、触れて、感じて、感動します。
たとえば、散歩1つとはいえ、景色だけを楽しむのではありません。
目には見えない音を聞いて、楽しむようにします。
目に見えない、温かさ、寒さといった季節を、皮膚感覚を通して感じ取ります。
音は目に見えないだけあって、意識しないと、なかなか注意が向きません。
景色を眺めながらも、感覚の意識を向けて、体全体を通して感じます。
私の家のすぐそばに烏山川緑道という、長い散歩道があります。
都会のど真ん中に、木々のある緑道です。
休日や銭湯の帰りなどには、よく立ち寄り、散歩をしてから家に帰ります。
散歩をしていると、景色が変わるだけでなく、ところによって音も変わってきます。
住宅街の近くになれば、家族の声が聞こえてきます。
川のそばを通れば、水の流れる音が聞こえてきます。
公園の近くでは、子どもが遊んでいる声が聞こえ、草むらの近くではコオロギの鳴き声が聞こえてきます。
景色を見て楽しむことも、十分な癒しになりますが、音も同時に楽しめば、さらなる癒しになります。
夏の緑道はむし暑く、雪の降る冬の日には真っ白な緑道へと、様変わりします。
暑い、むし暑い、寒い、涼しいといった感覚を、皮膚感覚を通して春夏秋冬を感じ取ります。
これが感動のある癒しの散歩です。
たかだか散歩とはいえ、心にじんと響く素材はたくさんあります。
目だけを通して「見る」のではなく、音も同時に「聞き」、気温や風を通して「感じ」ます。
この五感を通して感じることを、感動というのです。