海外旅行をすれば、国内では経験できないような数々の体験ができます。
風習や文化など、母国とは大きく異なります。
「へえ、こういう文化があるのか」
「こういう街並みが世の中にはあるのか」
「母国にはない変わったマナーだ」
おそらくそのときの姿勢は、母国と比較になっていることでしょう。
私が最も印象に残っているのは、アメリカに旅行した際の「チップの習慣」でした。
アメリカではレストランで食事し終えてテーブルを離れる際、テーブルの上に15パーセント前後のチップを置く習慣があります。
チップは食事を提供してくれたウエイターやウエイトレスへの感謝の気持ちです。
一方、日本ではチップという習慣はありません。
食事の会計の中に、チップも含まれているという考え方です。
結局どちらも、支給してくれた人への感謝の気持ちです。
それをどこで表現するかの違いだけです。
「テーブルの上か、レジなのか」です。
初めて日本を離れ、海外で「チップ」という慣れない習慣を体験したとき、正直、最初はとても面倒と思いました。
しかし、しばらく滞在を続けているうちに意識が変わってきました。
チップのある習慣の国のほうが、行き届いたサービスを提供している場合が多いと感じます。
自発的にサービスを提供しようとする姿勢や心がけが、まっすぐ伝わってきます。
なぜでしょうか。
このサービス精神は、チップがある習慣があるからこそ湧き出てきます。
お客さんとしては、素晴らしいサービスを提供してもらえれば、チップとして感謝を表現できます。
金額であり、数字として評価できる。
サービスを提供する側も、より多くのチップを得たいがために、仕事を工夫したりやる気を出したりします。
その結果、気持ちが引き締まったり自発的にサービスを工夫したりするようになります。
チップの習慣によって、自然と人が育つシステムであることに気づきました。
そういうメリットがあると「チップという習慣もいいな」と思いました。
レジで淡々とお金を払うのも気楽でいいですが、テーブルの上で感謝を表現する文化も悪くはない。
そう思えるようになることが大切です。
この比較は、母国にはない経験を海外でして、初めて得られる感覚です。
海外の経験で何が貴重なのかというと、そういう母国にはないサービスを受ける場合があることです。
今まで常識だと思っていたものとは違う、別の習慣や文化に出会うと、ぱっと視野が広がる感覚があります。
未知の経験が、素晴らしい教養です。
教えられたわけでもなく「なるほど」とわかるのです。