和食のときにはお決まりの「お吸い物」があります。
お味噌汁、けんちん汁、豚汁など種類はさまざまです。
軽い和食料理店では、ふたなしでお吸い物が出てくるところもあります。
しかし、高級和食料理店では、必ず蓋が付いて出てきます。
まず蓋の役目ですが、お吸い物の中にごみが入らないようにするためです。
また出来上がったばかりの温かさを逃さないためにしています。
お吸い物に蓋をすることで、熱を逃げにくくしています。
口にするときには、当然蓋を取りますが、問題は食事の後です。
この蓋を、元に戻すべきかどうかです。
元に戻してしまうと、飲んでいないように見えてしまい、店員さんにわからないためやめたほうがいいのではないかと思います。
しかし、蓋を開けっ放しにするのも、お椀の底が見えてかっこが悪いものです。
わざわざ、蓋をずらして閉じてしまう人もいます。
人によっては、店員さんに「飲み終わりました」という意味で、蓋を逆さまにして閉める猛者もいるようです。
どれが正しいのでしょうか。
「元のとおり蓋を閉めておく」のが、正しいマナーです。
理由は「お椀に傷を付けないため」です。
お椀には、繊細なうるしが塗られて、細かな装飾が施されています。
高級な和食料理店ほど、味で楽しむだけでなく、目でも楽しませてくれます。
お椀に美しい装飾がありますから、お吸い物は「飲む楽しみ」だけでなく「見る楽しみ」まで味わわせてくれます。
そのきれいな漆は、蓋を逆さまにしていると傷付きやすくなります。
では、お店の人が食事を片付けるタイミングですが「雰囲気」で感じ取ってくれます。
店員は毎日数多くのお客さんの食事を目にしている、プロのサービスマンです。
あなたが思っている以上に、食事が終わった雰囲気は感じ取ってくれています。
こちらからわざわざ合図しなくても、しぐさや雰囲気で感じ取ってくれるので、そもそも心配をする必要はないのです。