私の母は、機会があるごとに口にするフレーズがあります。
「人は人。自分は自分」というフレーズです。
幼いころは見識が狭く、意味がよくわかりませんでした。
むしろ「人と同じであることのほうがよいこと」と思っていました。
しかし、19歳のころから留学を始めて、私の価値観が大きく変わりました。
アメリカのロサンゼルスは、人種のるつぼです。
世界各国から、いろいろな人が集まっているところです。
ロサンゼルスで生活を始めた衝撃は、今でもはっきり覚えています。
いろいろな人種や文化が、同じ都市に集まって暮らしています。
日本人、韓国人、中国人、アルメニア人、ベトナム人、イタリア人などです。
「本当にいろいろな人がいるな」と痛感しました。
それだけたくさんの人が集まっても、秩序がありました。
アメリカには、お互いの違いを認め合う考え方が、文化としてあります。
「素晴らしい」と思ったのです。
そうした経験を重ねるうちに、自分の見識の狭さを恥じました。
そのとき、母の「人は人。自分は自分」という言葉を思い出しました。
「同じ人はいない。人それぞれ」ということです。
納得した瞬間です。
そのときから、多くの人を寛大な目で見ることができるようになりました。
偏見や先入観が消え、ありのままを受け入れることができるのです。
それは自分に対しても、考えることができるようになりました。
私は、他の人と変わっていると感じます。
変わった部分が、誇らしく感じられるようになりました。
日本の社会は、みんな、同じようにするための教育がまかり通っています。
みんなと違っていると、変な目で見られたり、いじめにあったりします。
誤解を恐れずに言えば、出る杭が打たれやすい社会です。
受験1つにしても、みんなが同じ1つの答えを答えることができるかどうかの試験です。
みんなと同じ答えを出せない人は「落ちこぼれ」と言われます。
それでは創造力が養われません。
そういうのが苦手で、抵抗がありました。
答えはいくつあってもいいし、答えを見つける方法も、たくさんあっていいはずです。
自分の視野を広げるためには、1つの価値観だけでなく、たくさんの価値観を吸収すればいいのです。
たくさんの人と出会い、たくさんの経験をして、たくさんの本を読んでいきましょう。
「変わった性格だね」と言われることが、快感になるのです。