「井の中の蛙」という言葉があります。
広い海を知らない蛙のように、外に広い世界を知らず、狭い範囲の知識にとらわれることをいいます。
世間では井の中の蛙を非難する風潮があり、外に出て行くことを推奨する言葉が聞かれます。
「狭い場所で満足するな」
「外に飛び出そう!」
「いろいろなところに旅行しよう」
「外には広い世界が広がっている」
「いろいろなものを見て、見識や世界観を広めよう!」
井の中の蛙という言葉はネガティブな意味として使われることが多く、世間知らずの代名詞になっています。
しかし、ここに落とし穴があります。
誰でも広い世界に飛び出ていくのがいいわけではありません。
人によっては事情はさまざまです。
外の世界に興味がなくて、現状に満足している人もいるでしょう。
狭い世界のほうが、住み慣れていてて知り合いも多く、居心地がいい人もいるでしょう。
「冒険したくない」「外の世界に興味がない」「狭くてもいいからここで過ごしたい」という人もいるでしょう。
広い世界に出て行くと、迷子になったり誘惑に振り回されたりする可能性もあります。
「あえて広い世界を知りたくない」というのもいるかもしれません。
生まれ故郷を愛していて、地元で一生を過ごしたい人もいるでしょう。
親や家族を大切にしたいから、実家から離れたくない人もいるはずです。
今の場所・今の環境に満足している人は少なくありません。
そんな人は、井の中の蛙として生きるのもありです。
はっきり自分の生き方が定まっているのは良いことです。
「井の中の蛙=悪いこと」と考えるのは固定観念です。
あくまで広い世界を知らないだけであり、罪でも悪でもありません。
世の中には「井の中の蛙」という生き方が合っている人もいます。
映画『船の上のピアニスト』の主人公ナインティーン・ハンドレッドは、外に出ることなく、船上での一生を選びました。
「知らないほうが幸せ」ということもあります。
生まれ故郷で一生を貫くことも美しい生き方です。
外野からやいやい言われようと、まず自分の希望を尊重することです。
前向きな事情であれ後ろ向きな事情であれ、一番重要なのは「自分が納得していること」です。
自分が納得しているなら、その生き方を貫くのが一番。
納得しているなら、井の中の蛙として生きるのも、素晴らしい人生です。