「マルチタスク」という言葉があります。
マルチタスクとは、いくつかの仕事を同時並行で進めることをいいます。
もともとコンピューター処理の世界で使われていた言葉ですが、ビジネスでもよく使われます。
マルチタスクで仕事をしている人は「仕事のできる人」という印象があります。
賢くて、手際もよくて、頭の回転も速い人のように感じるもの。
同時並行で複数の仕事を進めることができるのは、スピードが速くて効率的に思えます。
マルチタスクに魅力を感じて、多くの人がマルチタスク型で仕事をしたがります。
いつの間にかマルチタスクの信仰者になっていることも少なくないのです。
ここに落とし穴があります。
仕事の質を高めたいなら、マルチタスクは避けるべきです。
マルチタスク型の仕事では、質を上げるのは困難です。
むしろ下がってしまうことも少なくありません。
もともと人の脳は、マルチタスクができるようになっていません。
マルチタスクになるには、手際よく処理しなければいけません。
コンピューターはマルチタスクが得意と思われていますが、実際は違います。
コンピューターは一度に1つの作業しかできません。
コンピューターのマルチタスクも、短い間隔で高速に作業を切り替えているにすぎません。
切り替えスピードが速いため、同時進行しているように見えるだけです。
それは、CPUの処理スピードが速く、なおかつ疲れを知らないコンピューターだからできることです。
マルチタスクは、コンピューターは得意でも、人間は不得意です。
同時に複数の仕事を進めようとすると、頭の切り替え回数が増えるため、うまく集中できません。
頭を切り替えるにも、エネルギーを使います。
頭を切り替えるたびに、時間のロスが生まれ、余計なエネルギーも消耗します。
ストレスが増えて疲れやすくなる。
なかなか集中ができず、質の向上が妨げられるのです。
仕事の質を高めたいなら、シングルタスクで取り組むことです。
「1つずつ仕事に取り組んで片付けていく」ということです。
地味で平凡に見えるかもしれませんが、これが最もスマートです。
シングルタスクになると、目の前に集中できるため、限りある資源を有効に活用できます。
集中することで、ミスも減って仕事の精度も高まります。
スピードが上がって、片付けるのが早くなります。
仕事の質を上げたいなら、マルチタスクよりシングルタスクです。
集中力が高まると、記憶力と思考力も引き上げられます。
シングルタスクになると、すさまじい集中力を発揮できるため、120パーセントの結果を出せます。
結果として、質の高い仕事を実現できるのです。
なかなか仕事の質が上がらない状況があるなら、マルチタスクを疑ってみてください。
良かれと思ってしているマルチタスクが、質の低下の元凶になっているかもしれません。
マルチタスクをやめ、シングルタスクに切り替えるだけで、状況を打開できることがあります。
意外なことに、マルチタスクよりシングルタスクのほうが早く終わることもあります。
最大限に集中力を発揮した結果、一つ一つの仕事の終了が速くなるためです。
シングルタスクで1つずつ仕事を片付けたほうが、かえって効率がよくなることは珍しくありません。
仕事の質が高くなる上、仕事時間も短縮できるのですから、シングルタスクをばかにできません。
仕事の質を高めたいなら集中力です。
集中力を最大まで高めて発揮させるなら、マルチタスクよりシングルタスクが適しています。
どうしてもマルチタスクを実現させたいなら、人の手を借りましょう。
たとえば、外部の人に外注したり、同僚に仕事を請け負ってもらったりです。
人に割り振って、物理的に仕事を独立させた状態を作れば「個人」の状態になるため、集中力を妨げることはありません。
物理的に仕事を同時進行させることができます。
マルチタスクでいながらシングルタスクを実現できます。