上手な子どもの育て方というのは、まずこの一言に集約されます。
「子どもにはたくさんの経験を積んでもらう。失敗しても親は叱らず、できるだけ許す」
これが、子どもが成長するポイントです。
人は誰でも、まず「無知」という状態から生まれてきます。
生まれてきたばかりの赤ちゃんは、まさに何も知らない何もわからないという「完全なる無知」の状態から生まれてきます。
ここがいわばこの世でいう、スタート地点です。
今でこそ人それぞれに個性や能力に差がありますが、生まれてきた瞬間はみな同じ「0(ゼロ)」の状態から始まるのです。
何も知らない赤ちゃんは、まず大人たちからの保護を受けます。
哺乳類の中でも、大人たちの保護を受けないと生きられないのは人間くらいです。
馬やヤギは私たちと同じ哺乳類でも、生まれてまもなくすれば自分の足で立つことができるようになります。
生まれてきたばかりでも、ほうっておけば自分の力で立ち、生きていけます。
親の力を借りずとも何とか自分の力で立つことができるのです。
シカやメダカでも同じです。
しかし、人間だけは違います。
生まれたばかりの赤ちゃんは、自力で生きられません。
人間ほど、生まれたばかりの状態が無力な生き物はありません。
大人たちの保護がなければ、必ずと言っていいほど赤ちゃんは立つことはおろか生きることすらできません。
まったくの能無しの状態なのです。
これほど無力で無知な状態から、あなたもこの世に生まれてきたわけです。
このことをよく理解しておけば、上手な子どもの育て方も次第に見えてきます。
何も知らないのですから、まず人は「失敗」を犯します。
これはあまりに当然のことであり、何も知らない人が失敗をしないというほうがおかしいことです。
親として子どもを育てるにあたっては「子どもは失敗をする天才である」ということを頭に叩き込んでおく必要があります。
どんな子どもでも、失敗をしない子どもはいません。
何をやるにも失敗します。
コップの水をこぼしたり、皿を割ったり、壁に落書きをしたり、やりたい放題です。
そんな子どもの暴れ回る姿を見て、親は決して怒ってはいけません。
手先がまだ発達途中である子どもは、コップの水をこぼしたり皿を割ってしまったりします。
また善悪の区別のつかない子どもは、壁に落書きをすることが悪いことだということも知りません。
子どもがそんな失敗を犯したときに「コラ! ダメでしょ!」と親が怒鳴るのは、子どもの気持ちを知らない、自分勝手な親です。
子どもは自分がなぜ叱られているのかわかりません。
上手にコップを持ちたくても、そんな気持ちとは裏腹になかなかうまく持つこともできません。
無力で無知な状態から生まれてきた人間が「できない、わからない、知らないことだらけ」であるのは当然なのです。
親は子どもの失敗に対して、寛大になることです。
失敗ごとにいらいらして怒鳴るのが、親の仕事ではありません。
子どもが犯す多くの失敗を、寛大な心を持って許すことが、親としての最初の心得です。
これは3歳や4歳の子どもたちに限らず、10歳・15歳・20歳になってからもそうです。
世の中で生きるためには、常にわからないことやできないこと、知らないことというのが付きまといます。
それに出くわしたときには、必ずと言っていいほど「失敗」をするということです。
この考え方は、人が生きていくうえで大きな支えになります。