私が生まれて初めて自分の部屋を持ったのは、小学校の高学年になったときでした。
それまでは、ずっと妹と同じ部屋で勉強をしていました。
寝るときも、両親と妹と私とで寝る形でした。
1人だけの空間は、まだありませんでした。
子どもはまだ幼いころは親と一緒にいたがりますが、思春期あたりから1人の時間を持ちたがります。
これを世間では「プライベート」と呼びます。
今まで親と一緒にいたがっていた子どもが、思春期を迎えたくらいから手のひらを返したかのように1人になりたがります。
私の場合、小学校の高学年ごろから「プライベート」を持ちたくなりました。
親と相談した結果、親は自分の部屋を持つことを許してくれました。
妹は1階にある1室を与えられ、私は2階にある1室を与えられました。
今まで妹と一緒に使っていた2段ベッドを上下切り離して、上側は妹に与えられ、下側は私に与えられました。
私1人だけの部屋を持つようになってから、部屋の管理はすべて自分でさせられるようになりました。
私にとって、今の自己管理能力が備わってきた原点は、ここにあります。
何を、どこに、どう置くか。
自分にとって快適な空間を作り上げるために、私は知恵を振り絞ります。
最初は、部屋がめちゃめちゃに散らかっていました。
今まで、ずっと親がやってきた部屋の管理を、これから自分一人で任せられると、最初はなかなかうまくいかないのです。
自立するために子どもにしてもらいたい経験は、この「知恵を絞り出す経験」です。
最初はうまくいかなくても、子ども本人にやらせてみることで、子どもは自分の部屋のために、知恵を絞り出そうとします。
「どうすればいいのかな」と、自問自答するのです。
自己管理能力は、才能ではありません。
自分で養うものなのです。
子どものころに与えられた部屋が、子どもの自己管理能力を鍛え上げるのです。