入社をして間もないころ、おそらくあなたは一種の絶望を感じることでしょう。
たいてい入社したばかりの新人は、大きな夢や希望を抱いています。
抱きすぎているばかりに、現実とのギャップに驚きを隠せません。
「大きな仕事を担当して、大きな実績をあげたい。
しかし、やらされることといえば雑用ばかり。
コピーとり、お茶くみ、掃除。
こういうことをするために、仕事をしているわけではない」。
中学校の部活のようです。
テニス部に入部したばかりの新人に、ラケットを渡し、コートでボールを打たせてくれるわけではありません。
入部したばかりの新人は、まず「球拾い」から始めます。
先輩が打ち損なったボールを拾い、保守役を努めます。
テニス部に入部した人はみんな、テニスをしたいから入部したわけです。
しかし、やらされることといえば球拾いばかり。
コートはおろか、ラケットさえ握らせてくれません。
ここで仕事を辞めてしまう新人が多いのです。
「球拾いをするために、テニス部に入ったわけではない。
しかし、やらされることといえば、雑用ばかり。
球拾い、ラケット磨き、掃除。
こういうことをするために、テニス部に入部したわけではない」。
あらあら、さっきの仕事の例とそっくりですね。
本当は、新人には新人に適した仕事が与えられています。
ここを見逃してはいけません。
テニスの球拾いをしっかりするためには、先輩の動きをしっかり見ていなければなりません。
手足の動きを見て「この球は打てないな。よし、球を取りに行く準備だ」と、先輩の動きを真剣に見つめていなければなりません。
これほど手本を学ぶチャンスはありません。
新人には、基本的な動きを学ぶチャンスが与えられています。
そのために「球拾い」という仕事をさせているのです。
球拾いとはいえ「保守」という立派な仕事が与えられているのです。
初めてテニスに取り組むときには、まず手本となる先輩の動きをしっかり見て、打ち方やタイミングを勉強します。
「このボールは打てそうだ」
「このボールは打てそうにない」
「こういうボールのときには、どう対処すればいいのか」
「なるほど、こういう方法で攻めればいいのか」
こうした答えは、先輩の動きを目の前に観察し、吸収することで学べます。
目の前で数多く繰り広げられていますから、これほど勉強できる機会はありません。
「球拾い」という名前がついているから「雑用だ」と勘違いをして、やめてしまう人が多いのです。
ださいと感じるかもしれませんが、学べる勉強はたくさんあります。
雑用をどれだけ真剣に取り組むかによって、仕事を辞めてしまうか、大きく成長できるかが決まります。
球拾いは「雑用」ではなく「勉強」です。