人類の歴史で、体臭が社会問題として取り上げられ始めたのは、実はまだ最近です。
昔は「体臭問題」は、あまり大きく取り上げられていませんでした。
技術が未発達の時代は、不衛生な環境が当たり前でした。
においが問題というより、においがあって当然だったのです。
「くみ取り式」と呼ばれるトイレをご存じですか。
日本で使われてきた、落下式便所の1つです。
今では考えられませんが、以前のトイレといえば、大便と小便の混ざった激臭があって当然だった時代があります。
昔、食事を作るといえば、まきを使って火をおこす手順から始まりました。
調理中は、部屋中が、煙と調理のにおいで充満するのです。
洗剤も今ほど発達はしていませんから、服を洗っても、汚れもにおいもきれいに取れませんでした。
昔は、強いにおいに囲まれた生活が普通でした。
体臭はあっても、周りの強いにおいのおかげで、打ち消していたのです。
しかし、時代は変わりました。
以前はくみ取り式だった便所も、今では水洗式に変わり、においがほとんどしなくなりました。
台所では、換気扇が当たり前になり、料理のにおいが小さくなりました。
焼き肉店では、排気消臭装置が当たり前になりつつあります。
洗剤も発達して、ナノレベルの小さな汚れまで落とせるようになりました。
現代の技術が進歩するにつれて、生活の衛生環境が整い、生活のにおいが消えているのです。
そこに拍車をかけるのは、食の欧米化です。
24時間営業の店ができ、肉が手軽にいつでも食べられるようになりました。
肉を簡単に食べられるようになったのはいいのですが、油分の多い食事は、体の体臭を悪化させます。
なんと言う便利な世の中でしょうか。
技術が進歩して、生活のにおいが小さくなればなるほど、以前は気にならなかった私たちの体臭が浮き彫りになっています。
皮肉なことに、1つ問題を解決したと思えば、また別の問題が浮上です。
モグラ叩きのようです。
技術の進歩によって、清潔な世の中がもっと進んでくれば「体臭問題」は、もっと大きくなるかもしれませんね。
体臭問題を突き詰めると、実は現代の技術進歩によって生まれていることがわかります。
現代人は、少しにおいに敏感すぎるのではないでしょうか。
たしかに体臭は不快を伴いますが「気になる」と思えば思うほど、気になるのが体臭です。
他人の体臭を感じても、あまり考えすぎないようにしましょう。