「どうせ意味が理解できないのだから、言葉を語りかけても無駄だ」
以前私は、そう思っていた時期がありました。
言葉を理解できるはずがありませんから、言葉を語りかけても意味がないように思えます。
しかし、実際はどうでしょうか。
クッピーに「かわいいね」「いい子だね」「すごいね」と言葉を語りかけると、意味を理解したような表情や態度を返してきます。
意味を理解しているようです。
これはどういうことでしょうか。
実は、犬はきちんと人の言葉の印象を受け止めています。
言葉の「意味」ではなく「印象」です。
犬は、言葉は理解できません。
文字を書いたり、読んだりなど、言語としての能力はありません。
しかし、言葉の印象なら理解できます。
いきなり矛盾をしていることですみません。
犬は言葉を理解できないが、言葉の印象なら捉えることができます。
どういうことかご説明しましょう。
人が言葉を話すとき、言葉に自然と「感情」がこもります。
言葉は、意味ではなく「音」です。
たとえば、心から愛している大好きなペットに感情を込めて「かわいいね」と言ってみましょう。
そのときの音を聞いてください。
言語としての「言葉」ではなく「音」です。
感情がこもった「かわいいね」という言葉は、柔らかくて気持ちのいい音として聞こえますね。
心地よい春の中、花が咲く野原に暖かい風が吹いているような音に聞こえます。
犬は、その「音」で判断できます。
言葉の意味は理解できなくても、飼い主が優しい表情で、柔らかい音を口にしているところを見ています。
犬は「おや。なにやら嬉しいと言っているのだな」と理解します。
言葉は理解できませんが、飼い主の表情や発する音によって、プラスの印象が十分に伝わっています。
逆も同じです。
「こら!」「ばか」「ダメ」という言葉を、感情を込めて言ってみましょう。
こうしたマイナスの言葉を「言語」としてではなく「音」として聞いてみましょう。
台風がやってきて、風が強く吹いているような、慌ただしい音に似ています。
落ち着かなくて、そわそわします。
言葉の意味は理解できなくても、飼い主が険しい表情で、激しい音を口にしているところを見ています。
犬は「おや。なにやら気分を害しているようだ。悪いことを言っているのだな」と理解します。
言葉は理解できませんが、飼い主の表情や発する音によって、マイナスの印象が十分に伝わっています。
犬は「言葉」がわかりません。
しかし「音」ならわかります。
聴覚は、圧倒しています。
人が犬に優しい言葉を語りかけるのは決して無駄ではありません。
犬に向かって「かわいいね」「いい子だね」「すごいね」という言葉をかけてあげると、犬は優しい気持ちになれます。
こうしたことから、言葉は理解できなくても、その印象はきちんと伝わります。
ペットにはどんどん語りかけてください。
まったく無駄ではなく、きちんと伝わります。