動物には信じられない能力があると言われます。
犬の突出した能力といえば、何でしょうか。
そうです「臭覚」です。
犬には、人とは比較にならないほど、驚異的な臭覚があるといわれています。
一説によると、犬の臭覚はなんと人間の100万倍もあると言われます。
100倍ではありません。
100万倍です。
「1000000」と0が6つも並びます。
けたが違いすぎます。
私もテレビや雑誌で見たり聞いたりしたことはありましたが、なかば半信半疑でした。
「少し大げさに言っているだけだろう」
しかし、です。
その驚異的な臭覚を信じざるを得ない体験をしたことがあります。
それはクッピーを飼い始めて、数カ月後のことでした。
クッピーと一緒に祖父の車に乗って、海に出かけたことがあります。
私の実家は兼業農家なので、荷物を載せられる軽四トラックがあります。
そこにクッピーを乗せて、15キロメートルほど離れた場所へ出かけました。
当然ですが、クッピーは完全に初めて行く場所です。
海でクッピーと遊んでいて、しばらく経ったときです。
少し目を離した隙に、クッピーが行方不明になりました。
目を離した私たちもいけませんでしたが、必死になって探し回りました。
しかし、やはりどこを探してもいません。
「クッピー! クッピー!」と叫んでも、見当たりません。
いつもクッピーを呼ぶときには口笛を吹くのが決まりになっています。
ピューピューと口笛をすれば、聞きつけたクッピーが大急ぎでやってくるはずですが、まったく反応がありません。
2時間くらい探し回りましたが、いくら探しても見つからない。
仕方ないので、車に乗って家に戻ると、なんとすでにクッピーが先に戻っています。
もう一度言いますが、クッピーがいなくなったのは、完全に初めて行った15キロも離れた場所です。
家族に話すと、全員がまさかと言って驚きました。
祖父も私も見ていたので、間違いではありません。
「もしや……いや、まさか……」
1つだけ心当たりがありました。
においです。
軽四トラックの荷台に乗っていたので、移動している最中、自分のにおいが道に残り、宙に舞っていたことは考えられます。
しかし、においと言っても微弱すぎます。
考えられるとしたら、それしか思い浮かびません。
クッピーは15キロメートルの間、残っていた自分のにおいを嗅ぎ分けて、自宅まで戻った。
そうとしか考えられません。
もちろんどうやって家に戻ったのかは、いまだに不明です。
クッピーのみぞ知ること。
犬の驚異的な臭覚を信じざるを得ない一件でした。