海外旅行で気をつけたいのは、警官です。
「え? 警官はむしろ頼りになる人じゃないの」
今、そう思いましたね。
人間は、きちんとした服の人に弱いものです。
海外で気をつけたいのは、きちんとした服装の人です。
警察服を着た警官。
事務服を着たホテルスタッフ。
スーツ姿のビジネスマン。
人間は、その人の着ている服装から身分を想定します。
外見からどのくらい信用できるかを決めてしまいがちです。
警察服を着た人を見れば「警察の人だな」と思いますし、ホテルの制服を着ていれば「ホテルのスタッフだな」と思います。
スーツを着ていれば「ビジネスマンだな」と思います。
しかし、です。
その見かけと身分が、必ずしも一致しているとは限りません。
プロの泥棒は、ここに付け込もうとするのです。
「こんこん」
ホテルの部屋でくつろいでいると、ノックが聞こえました。
のぞき穴を見ると、ホテルスタッフが立っています。
「おや。ホテルスタッフが何の用事だろうか」
そう思って、気軽にドアを開けてしまいがちです。
その瞬間に、部屋の中に入って襲われる可能性があります。
事実、私がこれまでに海外で被害を受けたのは、意外にもきちんとした服装の人からでした。
スーツを着た紳士が「個人タクシーを運営しているんだ。どこでも連れて行ってあげるよ」とやってきました。
きれいな黒塗りのタクシーでした。
なんとなく、そのきちんとした見かけや雰囲気から「信用できそうだな」と思ってしまったのです。
しかし、その人は騙しのプロでした。
まんまと、タクシー料金を騙されました。
そういうケースは本当に多いのです。
一般的に私たちが想像する「悪い人」は、汚れた服装で、ぶっきらぼうで、人相が悪いというイメージです。
しかし、そういう人は、まれです。
プロの泥棒ほど、必ず紳士的です。
きちんとした服装でマナーがあり、いい笑顔で自然と近づくのです。