私は、過去に犬を同時に2匹飼ったことがあります。
いえ、2匹どころではありません。
最高でいえば、6匹も同時に飼った経験もあります。
実は、ちょっとした縁がきっかけで、同時に飼わざるを得ない状況になりました。
ある朝のことです。
なんと、飼っている犬が子どもを産みました。
それも1匹ではなく、5匹も子犬を産んでいました。
私は、犬を屋外で飼っています。
おそらくどこかの野良犬が寄ってきて、飼い主が目を離した隙に交尾をしたのでしょう。
飼い主としては「いつの間に」と驚きました。
犬は、一度に何匹も産みます。
そのときは子犬を5匹産んで、親犬を含めて合計すれば、6匹になりました。
今まで1匹しか飼っていなかったのに、いきなり6匹は大きな変化でした。
さすがにそれだけ多くの犬を一度に飼うのは大変です。
産まれたばかりの子犬を、知人か誰かにすぐ引き取ってもらおうと思いましたが、しばらくして考え直しました。
さすがに生まれたばかりの犬を、すぐ親から引き離すのはかわいそうだと思いました。
少しためらいました。
私もいい経験だ、しばらくの間だけでもと思い、複数の犬を飼うことになりました。
「これは犬の世話が相当大変になるに違いない」
おそらく毎日が運動会さながら、犬の世話に忙しくなるに違いないと、私も家族も覚悟していました。
犬が6匹増えたのですから、単純に考えれば、今までの6倍くらい手間が増えるだろうと思っていました。
しかし、です。
飼い始めてから数日が過ぎ、気づきました。
6匹も犬がいるにもかかわらず、飼い主の手間は変わりません。
覚悟していただけに、拍子抜けしました。
今まで通り、1匹を飼っているかのようです。
それはなぜか。
子犬の世話は、親犬がほとんどすべてしてくれるからです。
まず餌の量が増えると思いましたが、さほど変わりませんでした。
子犬は親犬のおっぱいを飲むので、子犬用の餌を用意する必要がありませんでした。
しばらく経って、子犬が目を開け、歩けるようになりました。
さあ、犬6匹分の散歩の時間です。
ときどき2匹の犬を散歩している飼い主に出会いますが、それどころではありません。
親犬と子犬を含めた、合計6匹を一度にリードにつないで散歩するのは、絶景でした。
しかし、これも大変ではありません。
犬が6匹いるからとはいえ、1日6回散歩をするわけではありません。
1匹でも6匹でも、一度に散歩へ連れて行けば、手間は1回で済むことに気づきました。
子犬の世話も、手はかかりませんでした。
私は生まれたばかりの子犬の対応は初めてだったので、どう接していいのかわかりませんでした。
しかし、心配はまったく不要でした。
やはり母犬のおかげです。
母犬が子犬たちの面倒を見てくれています。
犬はどこで学んだのか、犬の育て方をきちんとわかっています。
生まれたばかりのときは、母犬のおっぱいを吸っています。
子犬の危険を感じたら、親犬が口でくわえて回避させます。
適度に子犬同士を喧嘩させたりして、犬社会のルールを教えている様子も見られました。
また、犬の吠える声も心配でしたが、取り越し苦労でした。
犬が6匹もいれば、1日中わんわんと吠え、近所迷惑になるに違いないと思っていましたが、しんとしていました。
母親がそばにいるからです。
母犬がそばにいる間は、子犬がたくさんいても、おとなしいです。
やはりお母さんのそばにいるのが一番安心するのでしょう。
人間の赤ちゃんも、お母さんの胸に抱かれているとおとなしくなるのと同じです。
子犬の世話のほとんどは、親犬がしてくれるので、飼い主はあまり手を加える必要がありませんでした。
いえ、感じ方によっては、飼い主の苦労が減っていることさえあります。
ほぼすべてを親犬が面倒を見てくれているので、飼い主は親犬を集中的にケアしていればいいだけでした。
これは意外な事実でした。
「犬は何匹いても、飼い主の手間は変わらない」
私の実体験から、わかったことでした。