多くの飼育書を読んでいると、矛盾が書かれている場合があります。
「犬は集団生活をするため飼い主のそばのほうが安心する」と書かれている一方で「犬と一緒に寝てはいけない」矛盾です。
飼い主のそばがいいなら、寝るときも一緒のほうがいいのではないかと思います。
一緒に寝るべきかどうか迷う飼い主も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、例外は除き、一緒に寝ないことをおすすめします。
主な理由は3つあります。
まず一番の心配は衛生面です。
屋外で飼っている犬と、寝るときだけ一緒に寝るということは、まずないと思います。
屋外で飼っていると、ノミやシラミがついている可能性がありますし、衛生的ではないからです。
では、室内で飼っていれば衛生面で問題ないかというと、一概に問題がないと言えません。
たしかに屋外に比べれば清潔ですが、家の中もダニがいます。
また散歩で外出しているタイミングで、ノミやシラミなどをもらってくるかもしれません。
肛門周りがシーツに触れることもあるでしょう。
忘れがちなのは、毛の問題です。
犬の毛はよく抜け落ちます。
犬と一緒に寝ていると、毛がつきやすくなり、布団を洗う回数も多くなってしまいます。
野生の犬同士が寄り添って寝る場合の多くは、同じ階級の仲間同士です。
本来の犬社会では、リーダーと部下は近くで寝ることはあっても、体を温め合いながら一緒に寝ることはほとんどありません。
集団という単位を保ちながらも、リーダーの威厳があるため、寝るときは少し距離を置いて寝ます。
もし飼い主と一緒になって寝てしまうとどうでしょうか。
飼い主をリーダーではなく、同じ階級と思うようになる可能性があります。
同じ階級と思うようになると、主従関係が崩れ、犬が飼い主の指示を聞きにくくなる可能性があります。
主従関係を保つためにも同じ部屋で寝るまではOKですが、寝床だけは分けたほうがいいでしょう。
犬がいつまでも飼い主と一緒に寝るのは、子どもが成長しても親と一緒に寝るのと同じです。
もちろん幼い時期は親と一緒に寝るのもわかりますが、大人になっても一緒に寝るのは要注意です。
年齢を重ねた大人にもかかわらず、親と一緒のベッドでないと寝られないのは、寂しさを克服できていない状態です。
たしかに犬は集団生活をして、孤独を嫌う動物ですが「1人では寝られない」と「1人でも寝られる」とでは大違い。
飼い主との集団生活をしながらも、ある程度の孤独にも強さを持たなければなりません。
自立心を養うためにも、飼い主とは少し距離を離したほうがいいでしょう。
1人で寝させるようにしたほうが、精神的に強い犬へと育ちやすくなります。
「衛生面」「主従関係」「精神的成長」という3つの点から、基本的には飼い主が犬と一緒に寝るのは控えたほうがいいでしょう。
ただし、絶対に寝てはいけないわけではなく、例外もあります。
生まれたばかりの子犬の場合は、飼い主のそばにいたいため、泣きやまないこともあるでしょう。
またペットショップから引き継いだばかりのときは、環境の大きな変化のため誰かのそばにいたがります。
犬が、けがや病気をしてほうっておけないときもあるでしょう。
そういうときには「しばらく飼い主と一緒に寝る」という例外はあっても大丈夫です。
しかし、先ほど言ったとおり、いつかは寝床を分けて寝るようにしましょう。
愛犬と一緒に寝たいのはわかりますが「衛生面」「主従関係」「精神的成長」から、卒業しなければならない覚悟が必要です。