私が高校生のころ、知り合いにアキラという男子生徒がいました。
アキラは、大の女好きで、いつも女性の話ばかり。
同じ部活でしたから、放課後はいつもアキラと会うことになり、そのたびによく女子の話を耳にしました。
そんなアキラはナンパの達人です。
「昨日はこんな子に話しかけた。先日は○○高校の女子に話しかけた」
聞いてもいないのに、女子の話を始めます。
初対面にもかかわらず、気軽に話しかけることができるところは、アキラのすごいところです。
私はある日、いつもどう話しかけているのか、聞いてみました。
すると、意外な言葉が返ってきました。
「『ナンパなんです』と、話しかけている」というのです。
私は「そのままじゃないか!」と思いました。
「そう。だからこそ、うまくいく」
アキラは自慢げに答えます。
単刀直入に話をしたほうが、話を進めやすいといいます。
この方法のいいところは、最初に「ナンパ」という言葉を使い、話しかけているところです。
回りくどい表現はやめて、単刀直入に話しかけることに意味があります。
相手には、なぜ話しかけられているのかが、出会ってすぐはっきりわかります。
だからこそ、その気がない人は「結構です」「嫌」「やめてください」と断ってしまいます。
しかし、これは、アキラにとって好都合だったのです。
ふるいをかけることができるからです。
「見込みがなければ、否定的な態度を見せるから、余計なアプローチはやめてほかの子に話しかけたほうがいい」と言います。
見込みのある子は、笑ったり、話が進んだりするといいます。
最初の時点で、乗り気の有無がわかるため、見切りをつけやすくなります。
なかなか賢い方法です。
営業のプロは、最初の時点で「買う気がありますか。必要ありませんか」と単刀直入に聞いてしまうそうです。
「いいえ、いりません」
「必要ありません」
否定的に答えるお客さまには、それ以上のアプローチはせずスッパリと諦め、ほかのお客さまをあたるそうです。
買う気がないといっているお客さまに、しつこく説得すると、反感を生み出します。
「いらない」と言っているのに「買ってください」というしつこい営業マンほど、迷惑な存在はありません。
うまく説得して買う気にさせる、口のうまいセールスマンもいるようですが、うまい言葉に乗せられたまやかしです。
購入した後に目が覚め「やはり必要ない。買うべきではなかった」と思い、印象が悪くなります。
買う気のない人を買う気にさせるのではなく、初めから買う気のある人を探すことです。
アキラのナンパも同じように、脈のない子をその気にさせるのではなく、最初から脈のある子を探して、うまくいっていたのです。