「そのときの感動は、二度と味わえない」
これは、私は何度か旅をして得た教訓です。
海外旅行で感動できた場所は「また来ればいい」と思います。
もう一度同じ場所に来れば、再び、同じ感動を味わえるだろうと思います。
しかし、厳密に言えば、そのときの感動はもう二度と味わえない。
これは事実です。
その瞬間の感動には、いくつか要因が絡んでいるからです。
「慣れ」であったり「状況」であったりします。
初めてロサンゼルスのグリフィス天文台から夜景を見たとき、あまりの美しさに、心臓を打ち抜かれたような衝撃でした。
言葉にならない美しさ。
「百万ドルの夜景」とは、まさにこのことだと思いました。
その後、私はもう一度その感動を味わいたいと思い、高校卒業後の留学先はアメリカ・ロサンゼルスにしました。
留学中、現地の友人と再び夜景を見ると「1回目とは少し違う」と思いました。
感動できると言えば感動できますが、1回目とは違う感動です。
慣れていない友人に気を使い、たまたま人が多くて混雑し、ゆっくり夜景を見られる状況ではありませんでした。
すでに一度目にしたことがある夜景なので、初回ほどの大きな感動はありません。
その後も何度か訪れましたが、そのたびに別の感動がありました。
「慣れ」や「状況」という要因が複雑に絡み合い、同じ感動を味わおうと思っても、実際のところは不可能でした。
同じ光景を見れば、いつも同じ感動を得られるわけではない。
悲しいかな、人間です。
どの観光地でも同じです。
完全に同じ感動は、二度と味わえない。
同じ場所に来ることはできますが、まったく同じ感動をもう一度味わうのは不可能です。
すべての旅は「ライブ」です。
常に最初で最後の連続です。
ぜひ、それを意識しながら、旅をしてみましょう。
美しい夜景を見た。
珍しい美術品を見た。
楽しい買い物ができた。
おいしい食事を食べた。
そのとき「ああ。この感動は最初で最後か」と思います。
そう思いながら旅をすると、旅の感動を味わう姿勢が、断然強くなります。