将棋では投了の際、よく聞かれるセリフがあります。
これ以上打つ手はないと悟ったとき、棋士は頭を下げなら「負けました」と言います。
見ている人は「ああ、投了したのだな」とわかります。
投了の意思表示であり、勝負に決着がついたことがわかります。
そのほか「ありません」「参りました」というセリフもよく聞かれます。
何気ない様子に見えるかもしれませんが、このワンシーンには見習いたい礼儀作法があります。
棋士の立場になってみてください。
本当は「負けました」とは言いたくないはずです。
誰でも自分の負けは認めたくないもの。
負けず嫌いの人なら、なおさら口にしたくないでしょう。
頭も下げたくないかもしれません。
多くの人から注目されている一局であれば、なおさら言いにくくて、無言でその場から逃げ出したいかもしれません。
それでも棋士は、きちんと頭を下げながら「負けました」と口に出します。
相手を見て、姿勢を正して、深々と頭を下げる。
タイトル保持者のトップ棋士であっても、その礼儀作法は変わりません。
相手の目の前で、きちんと口に出して伝えるところがかっこいい。
言葉と態度で負けを認めている様子から、潔さが伝わってきます。
私たちもこの礼儀作法を見習いたいものです。
プライドが許さないからといって、無言で逃げ出したり、つまらないへりくつを並べたりしないことです。
負けたときには、恥ずかしがらず「負けました」と言えるようになりましょう。
抵抗感があろうと、悔しさや恥ずかしさがあろうと「負けました」の一言だけは言えるようになっておくことが大切です。
口に出すのは情けなくてかっこ悪く感じるかもしれませんが、誤解です。
きちんと負けを認めることができるのは、礼儀正しくてかっこいいことです。
「負けました」の一言が言える人は、必ず成長します。
自分の負けを認めることができるから、しっかり反省できます。
しっかり反省するから、次につながるのです。