基本的に習字では、下書きをすることはありません。
もちろん初心者という段階なら、鉛筆で軽く下書きをすることもありますが、基本的に習字は一発勝負です。
筆に墨汁を付けたら、呼吸を整え、一気に文字を書き切ります。
基本的に中断はしません。
思い切りが必要であり、ちょっとした勇気がいります。
消しゴムで消すことはできません。
真っ黒の墨汁で、色や形をごまかすこともできません。
半紙に書いた字は、はっきり残ります。
だからこそ、習字のときには独特の緊張感があります。
それは「一度きり」という覚悟から来るものです。
人生も同じです。
人生には、下書きがあるのでしょうか。
いいえ、残念ですが、人生に下書きはありません。
もちろん「下書きのような時間」「下書きのような時期」という比喩的な意味なら存在します。
しかし、厳密に言えば、下書きの人生はありません。
人生にあるのは、常に清書だけ。
常に本番であり、勝負であり、一度きりです。
今この瞬間は、最初で最後。
今日の日付も、人生で1回限りです。
失敗や間違いがあったからと言って、タイムマシンに乗って過去に戻り、やり直すことは不可能です。
うっかり怠けてしまったから、なかったことにすることもできません。
怠けたなら、人生の中に怠けた時間が残ります。
真剣になったなら、人生の中に真剣になった時間が残ります。
サボってしまったから、過去に戻ってやり直すことはできません。
後から過去に戻ってやり直すことはできません。
すべての時間、あらゆる瞬間は、一発勝負。
時間は前にしか進まないのですから、強く自覚しておきましょう。
特別大切な仕事をするときは、一度呼吸を整えてから取りかかります。
あなたの発言も振る舞いも生き方も、すべて清書です。
だから、丁寧に生きましょう。
そして、人生に対して誠実かつ真剣になることです。
一発勝負の習字と同じように、やり直すことを前提と考えるのではなく、常に本番という気持ちで生きることが大切です。
人生のすべての時間が、貴重で価値のあるものとして感じられるようになります。
「一度きりの時間」「一度きりの人生」という自覚を持つことです。
「一度きり」という実感が湧けば、時間の貴さが感じられます。
適当な生き方が減って、真面目な生き方が増えます。
すべての出来事がありがたく感じられるでしょう。
休日の過ごし方すら、真面目に考えるようになります。
たった一言の挨拶すら、清書と同じく本番です。
日々の勉強も、仕事の取り組みも、スポーツの練習も、緊張感を持って取り組みましょう。
緊張感があれば、生活の質だけでなく、人生の質も向上します。
人生には、下書きがありません。
だからこそ、常にベストを尽くすことが大切です。